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連載 : Kettleのお仕事

2024/04/17

ケトル和蝋燭をつくってしまったのですが、つくっただけで満足するのはアレなんでなにかおもしろいことしませんか(という提案)

伊集院隆仁

みなさん、燃えてますか。
もしくは、燃やしてますか(100万ドルの微笑で)。

ケトルの伊集院です。

突然ですが、ケトルのオリジナル蝋燭(ろうそく)が完成しました。
勢いでつくってしまったと言った方がいいかもしれません。

 

▲ 激渋の緑色の小箱に収められた、長さ7.5cm/2匁(もんめ)サイズの小さな蝋燭

やかんを思わせるゴールドに、黒のケトルロゴが入っています。

 

▲ ちゃんと燃えます。燃焼時間は40〜50分くらい

これ、いわゆる「キャンドル」ではなく「和蝋燭」ってところがポイントです。
なにが違うって全然違うんですよ、これが。

一般的なキャンドル(西洋ローソク)は、重油から精製されたパラフィンワックスをつかった糸芯のものがほとんど。一方の和蝋燭はオール植物性原料でつくられており、大きな違いは化石燃料由来か植物性原料由来か、というところ。

もっとも最近はごく一部で、100%植物性原料&生産工程のエシカルさを追求したヴィーガンキャンドルというものもありますが、炎の色や揺らぎ方などがキャンドルとは違い、和蝋燭にはなんとも言えない独特の味わいがあります。

このナイスなケトル蝋燭を制作してくれたのは「中村ローソク」さん。
今年で創業137年を迎える京都の老舗和蝋燭店です。

 

そもそも、なんでケトルが和蝋燭をつくったのか

きっかけはケトルも関わっている脱炭素プロジェクト「Earth hacks」の取材で、不詳・伊集院が中村ローソクさんに出会ったこと。

こちら中村ローソク代表の田川さん。
 

▲ 一見、コワモテだけど柔和な語り口が特徴の田川さん。和蝋燭をはじめとした京都の伝統産業の未来のことを真剣に考えておられます

先の取材で田川さんから和蝋燭の魅力と、業界全体が置かれている「厳しい状況」を聞き、大切な伝統産業の灯が消えそうになっていることに伊集院の「なんとかしなければマインド」が発動。東京に戻っていの一番に、ケトルCEO 船木にオリジナル蝋燭の制作を打診したところ即断即決でつくることになった――というのがざっくりとした流れです。

ケトル蝋燭をつくることで、和蝋燭の「魅力」と「課題」を少しでもみなさんに伝えたいという、結構ピュアな想いが起点となっています。

 

和蝋燭の魅力ってなによ

取材でお聞きした和蝋燭の魅力を5つにまとめます。

 

【その1:油煙が少なく、臭いもやさしい】

▲ 和蝋燭の原料になる櫨(はぜ) 画像提供:PIXTA

煙が出にくく、嫌な臭いもしないのがとってもナイス。バーやレストランみたいなところは、香りの強いアロマキャンドルよりも和蝋燭の方が向いているかもしれません。

 

【その2:屋外で灯しても消えにくい】
和蝋燭は風に強いと言われています。和蝋燭の中が空洞になっており、火を付けると空気が絶えず芯の中に供給されるため、少々の風で炎が消えることはありません。

 

【その3:時計の代わりとして使っていた話が超はんなり】
和蝋燭は大きさによって燃焼時間があらかた決まっているので、その昔は時計代わりに使われることもあったそうです。

「かつて京都のお茶屋さんでは、部屋を照らしていた和蝋燭が短くなると芸妓さんが『もう一本、いかはりますか?』と聞いていたんです。お酒をもう一本、ではなく蝋燭をもう一本、灯しますか(≒延長しますか)という意味でね」(田川さん)

▲ 画像提供:PIXTA

【その4:伝統的リサイクルを実践し続けている】
和蝋燭は燃焼時間が長く、寺院などでは最後まで使い切ることがほとんどありません。なので京都の和蝋燭職人は納品後にお客さんから、使いかけの余った和蝋燭を買い取り、それを溶かしてもう一度新しい和蝋燭にする慣習がありました。しかも室町時代から現代まで、そのシステムが残っているっていうからすごい。

 

【その5:日本の伝統美にマッチする"揺らぎ"】

▲ 京都の妙心寺桂春院で実施した和蝋燭×日本の美を愉しむイベントの様子  画像提供:中村ローソク

炎の形がたえず変わって、独特に揺らぎ続けるので"陰翳礼讃"の世界を演出してくれます。掛け軸や文化財も、昔の人はみんなその揺らぎの中で、日本の美術作品を鑑賞していたはず、と田川さん。

伊藤若冲の掛け軸を、電球のもとで観るのと和蝋燭に照らして観るのとでは、まったく違った体験になります。暗い室内で、和蝋燭で照らして鑑賞することで始めて、昔の人と同じ鑑賞体験になるのではないでしょうか」(田川さん)

総じて匂いや煙が少なく、風にも強く、また陰翳礼讃的な独特の揺らぎがあるので、食のイベント、アート系の屋外イベントなどでも和蝋燭は活躍してくれそうです。

 

でも産業自体は風前の灯…

▲ 画像提供:PIXTA

日本に蝋燭が伝わったのは奈良時代。仏教のバーターとして伝来したという説が濃厚だそうですが、なんか納得。つまり100年や200年ではなく、1300年くらいの歴史ある伝統産業――それが和蝋燭の世界なんですね。

そんなスーパー伝統産業が、もはや風前の灯。

生活に必要な明かりはほぼ電気に、またニッチな蝋燭市場もほぼキャンドルに取って代わられた結果、「もうやめて!とっくに和蝋燭のライフはゼロよ!!」状態なのです。

 

▲ 画像提供:PIXTA

職人さんによる手作りというのも和蝋燭の特徴ではあるのですが、故に、作り手・後継者不足も深刻。

このままでは確実に、和蝋燭の文化は途絶えてしまいます」と田川さんは漏らします。

谷崎潤一郎が称賛した陰翳礼讃の世界が再現されることはなくなり(デジタルで再現!とかありそうだけど、それは似て非なるものになるのがオチ)、数年後、数十年後に我々は失ったものの大きさに気づく…みたいなことになるのかもしれません。

市場に必要ないものと判断されている結果と言えばそれまでですが、見て見ぬふりをしていいのか、という気持ちになりませんか。なりますよね。ここまで読んだ心ある人なら、絶対にそう思うはずです。

できることからコツコツと。まずはケトルでは贈答用としてオリジナルの和蝋燭をつくりましたが、自分もつくってみたいなと思われる方がいたら、是非ご連絡ください。中村ローソクさん、ご紹介します!

 

また、

■サステナブル〜SDGs系のイベントで和蝋燭を使ってみたい。
■キャンペーンでオリジナルの和蝋燭を作りたい。
■食やアルコールイベントの演出として、匂いの少ない和蝋燭を使用したい。
■アートイベントの演出に和蝋燭を活用したい。
■トークイベントの“時計”として和蝋燭を使ってみたい。
■毎年恒例のキャンドルナイトのキャンドルを和蝋燭に取っ替えたい。

みたいな方もご遠慮なくお声がけください。

なお、中村ローソクさんは、某海外のラグジュアリーブランドから、「上客向けに、ウチのフレグランスを使った和蝋燭をつくってほしい」というオーダーを請け、1本何万もする香水を大量に使ったとんでもなく高価な和蝋燭をつくった経験もあります。

内容や条件によってはできること、できないことはあるかと思いますが、そこは中村ローソクさんの田川さんが頑張ってくれるはず(ボフッ!! ←今、田川さんのハートに火がつきました)

アートの視点でも、サステナブル文脈でも、伝統産業保護の観点でもなんでも結構です。和蝋燭をつかって〈なにかおもしろしこと〉をしたいと思われたクリエイターのみなさん。是非、ケトル伊集院までご連絡ください。

 

伊集院隆仁
1977年岡山県生まれ。前職は週刊誌記者で、スポーツ、事件、政治、芸能、社会など節操なくあらゆるジャンルのあらゆる現場で取材。2014年から博報堂ケトルに参加。オウンドメディアの編集、 自社媒体の編集・運営、その他ネットニュースの編集を担当。
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