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連載 : ”ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負

2021/06/01

“ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負 vol.10 岩木みさき×阿部博隆×井伊友博×青木良之×五味仁×日野昌暢「出来上がりは千差万別! 地域の食文化に適したみそが出来るまで」『みその教科書』(エクスナレッジ)刊行記念 中編

日野昌暢

(写真左上から時計回りに 日野昌暢、青木良之さん、岩木みさきさん、阿部博隆さん、井伊友博さん、五味仁さん 以下敬称略)

前編ではそれぞれのみその違いやみそ蔵の若たちの知られざる背景を聞いてきました。中編ではそのおみそをどうやって食べたらいいのかを伝授していただきます。

 

どんなみそをどう食べる?

日野:今日はみさきさんの強い想いがあって集まった皆さんなんですけど、自分のところのおみそを自分が食べる時に、どうやって食べるのが1番好きかというのを各々に教えていただきたいなと思っているんですけど、どうですか?

岩木:「蔵元さんは他の蔵のおみそも食べたりされるのでしょうか」と質問も入っています。

日野:五味さんどうですか?

五味:そうですね。今回のイベントに合わせて、皆さんの蔵のみそを交換する作業が、美味しいとか好みとかを抜いても、すごく素敵なことやったなーと思って。何の出汁使おうとか、この具がいいかなと考える時間がすごく良かったです。

普段は旅行に行くと気になったみそを買うので、それ単体で食べたりとか、混ぜて使ったりとかしますね。僕はいりこでとる出汁が1番好きなので、具材とかは季節の野菜だったら何でもいいかなと。みそのいいところは、大概何入れても大丈夫なので、すごい懐が広いなーと思っています。

日野:みそ汁は、冷蔵庫に入っているものを、思いつきで組み合わせてぶち込んで、お出汁とって煮ると、毎日偶然の出会い。

「あ、これみそ汁にしたら美味しいんだ」みたいな。みさきさんの本に出てくるプチトマトのみそ汁とか「トマト入れるのか!」と。僕1週間で2回ぐらいやったんですけど。

岩木:どうでした?

日野:美味しかったです。酸味がすごい出るので、酸味強い豆みそと合わせたらどうかなとか。じゃあ麦みそに合わせてみようとか。そうやって試行錯誤して、合うものを探して行くのがすごく楽しいです。

岩木:ありがとうございます。「具沢山みそ汁」が最近メディアとかで取り上げられるのもありつつも、 日々毎日いろんな具材入れてもいいけど、そんなに頑張らないで1回のみそ汁に1個具材入れればいいよという提案をしているので、プチトマトだけとかネギだけとかでもいいんです。

ネギも切り方、真っ直ぐ切ったり細かく切るとか、大根だけでも千切りやおろしにしたり、乱切りにするとか。油揚げでも、つい皆さん短冊切りにしちゃうと思うんですけど、大きめに切ったりとか、焼いたりとか。それだけでも全然違うと思います。

コロナになってから「みそ汁図鑑」として、みそ汁とご飯をインスタグラムにあげているので、みそ汁情報が知りたい方はそちらをぜひ。

レンジでできる牛丼の作り方

日野:今日もお料理を準備されていると。

岩木:そうです。電子レンジで牛丼を作ろうと思うので、喋りながらやっちゃいます!

玉ねぎ、それから牛肉。そして調味料、今回は和泉屋商店さんの安養寺みそですね。米みそと、みりん、お酒、水があるので、調味料をまずタッパーに全部入れて混ぜたら、そこに玉ねぎを入れて3分チンします。3分チン終わったら、そこに牛肉を乗っけてまたさらにチンしたらおしまいです。それをご飯に乗っけるだけなので、みなさんがトークしている間にチャカチャカ作ります。

 

岩木:サイトの方にもレシピ載せているので、そちらも見ていただけると皆さんにも作ってもらえるかな。

ステイホームというか、おうち時間でお料理が苦手な方とか毎食作るの大変という方増えてくると思うので、こうやって電子レンジで作れるのも取り入れてもらったらいいかなと。

豆みそには貝類

日野:一番食文化的には馴染みの薄い豆みそがどういう風に青木さんたちは食べられているのかお聞きしたいんですが?

青木:そうですね。出汁は鰹・昆布の出汁とってもらって。

日野:鰹と昆布の合わせだしですか?

青木:で、やっぱりおみそ汁のいいところは、先ほどもおっしゃっていたように、いろんな具材を使えることがいいことです。高校生とか中学生ぐらいになって気づいたんですけど、僕の家はひと世代ぐらい古い暮らしをしているんだなと。基本的に油揚げとか大根、アサリのみそ汁っていうので育ってきてまして。

日野:アサリがそんなにたくさん登場するんですか?

青木:アサリも近所の人に夏とかいっぱいもらいます。海が近いので。

日野:その教科書の中でも、豆みそのおすすめは貝類という風に書いてあって、確かにしじみのおみそ汁は豆みそで作られていること多いですね。いつも豆みそを使ってなかったんですけど、今日初めてアサリと豆みそで作ってみて、すごいさわやかで美味しかったです。

青木:ありがとうございます。

油揚げにしゅむ麦みそ

日野:井伊さんのところの麦みそは、僕が福岡出身で九州は麦みそ文化なので馴染みがあるんですけど、おっしゃる通り甘いんですよね。醤油もみそも甘いというのが西日本の特徴ですけど、井伊さんは実家の麦みそを使ったお料理とかで、好きなものありますか?

井伊:五味さんと一緒なんですけど、出汁はいりこですね。いりこが相性がいいです。何にしても具だくさんのおみそ汁にしても、油揚げは絶対入れます。油揚げにしゅんだ感じがもうたまらんですね。

日野:ああ、「しゅむ」っていうんですね。切り方は短冊切りなんですか?

井伊:短冊です。で、うちは結構、青木さんが言ったように、具沢山をよくするんです。揚げは必ず入れて季節の野菜で大根やサツマイモとかも。ちょっと甘いですけど、さつまいも入れてもすごく美味しいです。具沢山にすると、ご飯とおみそ汁だけでも夕食が成り立つぐらいな感じですね。

日野:僕も具沢山みそ汁、よくやります。

井伊:お料理も簡単に済んじゃいます。

日野:油揚げが好きだと。

井伊:はい。ぜひ日野さん、油揚げやってください。

日野:はい、やってみます。阿部さんはどうですか?

ホクホクジャガイモと安養寺みそバター

阿部:僕も毎日みそ汁飲んで、うちの蔵にあるいくつかの種類のみそを大体1週間おきくらいずつ「今日は赤みそにする」とか「白みそにする」とか、麹分が多いものにしたりという感じで、変えていきながら味をみたりとか。「なんか今日しょっぱいなー」とかそんなことを感じながらやっています。

今回みなさんから送っていただいたおみそで、いつもと同じ作り方で作って飲んだりしたんですけども、本当にそれぞれ特徴があってびっくりしました。井伊さんのやつだったら、「あ、すごい甘いな」とか、ただその中にも味わいがあったり香りがあったりと楽しませていただきました。

僕がオススメの食べ方は、ジャガイモを蒸して、ホクホクのジャガイモにみそをつけるんですよ。バターとみそを

日野:みそバターってやつですね。

阿部:そうですね。それしょっちゅうやるんですけど、子供も好きだったりとかして。

日野:いいですね。みそバターをホクホクのジャガイモにつけるというのはなかなか無いのでめっちゃいいですね。

みそごとに違う熟成期間

日野:今回、みそを交換していただいたんですけど、みなさんがそれぞれそれを楽しんだり驚いたりとかされているから、みその商売をしていても他のところのみそにはまだ発見がたくさんあるんだなあというのを聞いていてすごく思いました。

そのあたりで皆さん逆に、蔵同士で何か質問したいとか、ここどうなんですかみたいな話ってどうですか?

青木:豆みそは熟成させればさせるほど深みがでて、うまみが良くなるんですけど、それぞれのお店はどれぐらいの、何ヶ月とか何年が1番いいぞというタイミングなのか知りたいです。

日野:これ、色が影響するんですよね? 色の違いは、熟成が深ければ深いほど濃くなって、白みそなんていうのは、できて1週間とかその位で食べたりするんですよね。

岩木:そうなんです。

日野:だから別に、豆みそだから黒いわけじゃなくて、豆みそは寝かせた方が美味しいから寝かしてあって、それで色が濃くなってるみたいな話だと、これも教科書に書いてありますね。

岩木:そうですね、もちろん配合によっても変わってくるんですけど、分かりやすく言うと熟成が短ければ薄くて、置けば置くほど濃くなるので、それこそ麦みそであっても色が濃いものは存在しますね。豆みそはね、どうしても熟成が浅いとまだ味が慣れないので、濃いめにはなってくるんですけど。

日野:どうですか? 青木さんの質問、ほかの蔵の皆さん。

井伊:うちはですね、多分皆さんの中で1番短いんじゃないかなと思います。夏場の暑い時期を越すみそで、3ヶ月位。冬の寒い時期を越すみそで6ヶ月前後ですね。短期熟成型のおみそになります。

実験で2年ぐらい置いとったりもするんですけど、そしたらやっぱ青木さんとこのよりも紅いような黒いようなおみそになります、うちの麦みそでも。

日野:それはやっぱり向いてないんですか? おいしく食べるには。

井伊:こっちでは売れないですね。

日野:食べられないことはないんですよね?

井伊:あ、全然、食べられなくないです。美味しいです。ただ、ちょっと食べたら十分な感じ。こっちの地方の人は、結構色にうるさくて、白っぽいおみそに手を出すんですよ。

日野:はあー。もう本能なんですかね。

井伊:うーん、白っぽい=甘いようなイメージがあるんだと思うんですけど。僕が青木さんところのおみそを今回実際に食べさせてもらったら、正直ちょっとすみません、苦手でした。

青木:アハハ。

岩木:一番対極ですよね。

井伊:それはそう。多分逆も言えると思うんですよ、本当。多分青木さんからしたらうちのみそ、「甘すぎや」みたいな感じがあったと思うんです。

青木: そうですね、甘いですね(笑)。

井伊:ですよね。

見た目は似ていても違う味

岩木:合わせみそと米みそって、色も似ていたりとか地域も近いところがあると思うんですけど、逆にみその色とかが見た目は似ているので、ほぼ同じ色なんですね。でも食べると結構味違うなーと思っていて。

 

岩木:合わせみそ(やまごみそ)は麦と米なので、香ばしさがあるかなと思うんですけど。阿部さんと五味さんはどうでしたか? お互い食べてみて。

五味:ちょうど今朝、阿部さんのみそをもらったんでなめこ汁にして食べさせてもらって。米みそは麦が入っていると香ばしい分、癖がちょっと入るので、すごく食べやすかったですね。

岩木:阿部さんどうでしたか?

阿部:そうですね、いただいた中では、五味さんのおみそがみそ汁にした時に、同じような感じがしたんですけど、やっぱり麦とかが入っている分、若干香りがいつもと違うなというのがありました。

1個、青木さんのおみそを舐めたときに、「あれ? これどっかで似た味だな」と思ったんです。うちも安養寺みそを大体2年から3年熟成させて出していて。6年〜8年ぐらいの熟成したおみそをうちでは「種みそ」と言っていて、それを混ぜて調合して最終的に出します。

その6年7年のおみそが、青木さんのところのおみそと同じような味なんですよね。真っ黒になって、少し酸味があって似ているなとすごく感じました。

日野:そっか、みそは熟成すると酸味が出てくるということなんですかね。視聴者の方から「豆みそ、2年と3年では深みや味はどう変化しますか」という質問が来ているんですけど、青木さんどうですか?

青木:そうですね、2年だともう少し赤い。うちのは3年熟成なんですけど、3年熟成させると本当に真っ黒になって、より深み・コクが出る。

日野:一昨日家でマーボー豆腐を作ったんですよ。本格的なやつというよりかは、おみそを使って作る、うちの実家で母が使っていたレシピを、嫁さんが教えてもらって作ってるんですけど。

教科書に、このうま味があるから中華料理に合うとみさきさんが書いていて、なるほどねと思って、マーボー豆腐にこの豆みそを使って作ったらうちの下の子供がすごく美味いってめちゃくちゃ食べていましたね。

青木:ありがとうございます。

日野:だから今後マーボー豆腐は豆みそで作ってみようかなみたいな。豆鼓醬っていうんですか、マーボー豆腐に入っている… そういう醬みたいなコクが、熟成されたみそだと出るということなのかもしれないですねですね。

岩木:そうですね。

日野:すごく美味しかったです。

岩木:回鍋肉作っても美味しいですね。

ひろがるみその使い方

日野:あーなるほど、そういうのに向いているということですね。あともう1つ、知識的に学んだのは、豆みそだけ煮込んでも大丈夫という話。

おみそ汁は溶いた瞬間が1番香りが立って、あんまり煮詰めるとダメですよというのが常識かなと思ってたんですけど、名古屋のみそ煮込みうどんとかボコボコ沸騰しながら出てくるので、「割と最初から入れといて一緒に煮込んでも風味が飛びません」と書いてありましたよね、教科書に。

岩木:あります。酸味とか苦味があるのが過熱をすることでちょっとまろやかになったり角が取れたりするので、豆みそもあるし、さっき阿部さんが言っていたように米みそとかでも、熟成期間が長くなっているおみそは、味のいろんな構成、酸味、苦みが複雑になってきているので、結構加熱したほうがマイルドになると思ってもらったらいいかなと思います。

日野:そういうことなんですね。

岩木:ちなみに先ほどから作っていた料理、できました!

一同:おお~(拍手)。

岩木:しゃべっている間にチンしただけなんですけど、牛丼です!

日野:で、食べられないっていうね(笑)。

岩木:そうですよね(笑)。本当に皆さんに食べてほしかったです。和泉屋商店さんの安養寺みそで作ったのが牛丼です。ご覧いただいてる方とか地域によると思うんですけど、日本の8割が米みそと言われているので、スタンダードの米みそで、簡単に作れるどんぶりをというところで今回は牛丼にしました。

日野:今度やってみます。

岩木:ぜひ!

日野:ちなみにこの安養寺みそを選んだ理由というのがあるんですか?

岩木:牛肉とすごい合うなと思っていて。候補としてはハヤシライスとか、ビーフシチューか牛丼で、その中で皆さんを和・洋・中・エスニックで振ったときに牛丼になりました。

日野:なるほど、ありがとうございました。

岩木:安養寺みそもとっても香りがいいおみそなんですけど、阿部さんが今いらっしゃるそこの蔵の多分いろんなFRPのコンテナの中に、凄い林檎っぽい香りとか、洋ナシっぽい香りのおみそもあるんですよね。香りがとっても良いので牛肉とかとすごい相性が良いと思います。

(後編に続きます)

 

日野昌暢
1975年福岡県福岡市生まれ。2000年 九州芸術工科大学 芸術工学府 生活環境専攻修了。同年4月に博報堂入社。14年間の営業職を経て2014年よりケトルに加入。

「預かったご予算を着実な効果にしてお戻しする」という強い想いとともに、何が社会を良くするのか?を考えるデザイン発想で、事業企画や商品開発から、PR、プロモーション、マスメディアでの広告などまで、幅広い経験を活かした統合プロデュースを手がける。

また「本質的な地域活性」をマイテーマに、“外から目線”で地域資産を再編集し、地域のプレイヤーの“関わりしろ”を作りながら、事業、プロジェクト、プロダクトを共創し、開発して、情報発信を行っていくことを得意とする通称”ローカルおじさん”。

2020年には九州を取材テリトリーにしたローカル発Webメディア Qualities(クオリティーズ)を企画プロデュースし、創刊編集長。観光庁や文化庁の採択事業者へのコーチングなども多数行っている。

主な受賞歴に、2度のACC TOKYO CREATIVE AWARD グランプリ(2018,2022)、グッドデザイン賞BEST100(2022)、Spikes Asia ゴールド(2019)、カンヌライオンズ ブロンズ(2013,2019)、ADFEST ゴールド(2019)など。
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