SHARE THIS PAGE

ようこそ
カテゴリ
会社情報
閉じる
連載 : やかん月報

2022/02/09

ケトル代表はアートディレクター!?

船木研

 

 

アートディレクターの復活

今年から名刺にアートディレクターと入れました。16年前ケトルの創設に参加したときにアートディレクターだった私はこの肩書きを捨てました。手口ニュートラルを表明するのにアートディレクターだと、「デザインします!」ってもう手段が決まっちゃうから。これはケトルのイズムに反する。と思い、それ以降、イラレもフォトショもそれ以降あまりいじってません。デザイナーにとって絶対ないと廃業するくらい頼る神ソフトのイラストレーターのバージョン9からのソフトの進化を知らない世界でも稀有なアートディレクターです。

ケトルの社長になり経営や事業、企業さまの事業支援に携わっていている今、アートディレクターっていうのは誰もがなれるものではなく今更ですが武器なのではと改めて思い名刺に肩書きを復帰させました。

 

 

美大受験のこと

美大のデザインを志した人はわかりますが、受験課題っていうものがあります。ある課題に対して3時間でA2くらいの大きさのケント紙にターナー社のポスターカラーという絵の具で色を塗って表現します。これを毎日訓練するんです。自分の好みも嗜好も関係ない与えられた「なんじゃそりゃ!」な課題を瞬時に判断して解決する能力が求められます。平面構成課題とは「初めて見る人に自分のイメージを的確に伝えられるか」を問う課題。これをめっちゃ訓練して入学できた人が美大や専門学校のデザイン学科出身の人なのです。正解が全くないから、もしかしたら東大に受かるより難しいのかも。

当時の課題作品が今年実家に帰ったらあったので解説しますと平面構成課題には大きく

1:イメージ構成課題
2:モチーフ構成課題

とありまして、

1のイメージ構成課題の方は、発想の柔軟さを問われる課題。「日常の風景をテーマに自由に構成せよ」

 

 

 

とかで。日常をあえてクルマのサイドミラー越しの風景を大体に切り取るアイデア。

 

 

 

この課題は「成長を自由に表現せよ」みたいな課題。
そこに地中から見た樹木をイキイキと描くアイデア。

モチーフ構成課題の方はモチーフをどう捉えたか画面の構成力を問われる課題。「ぶどう、りんご、を自由に平面構成しなさい。」って課題。え?なんすか?ぶどうとりんごって!果物でしょ。ではなく、「ぶどうのつぶつぶの形状特長と、りんごのハートのシルエットを大胆に組み合わせてデザインすると美しいかも。」みたいなことや、「ぶどうはグリーンで表現して真っ赤なりんごをバックにすることで目立たせる。」みたいな思考のデザインの訓練を高校生の時から毎日死ぬほど訓練するんです。

 

 

 

これ、要は、全然関心ない事でさえ瞬時に自分ごとに捉えて、戦略(この方向で)、戦術(どうやって)、武器(何で戦うか)そこを一瞬で決めて最適値を実行する。これはマーケティング基礎だし、相当頭に解像度の高いゴールイメージがないと手は動かせません。これって、今求められる仕事に近い作業なんです。卒業してこのデザイン作業が職人的に超絶上手い人が有名グラフィックデザイナーになります。

 

 

デザインしないアートディレクターもあり?

ここで大事なのは「初めて見る人に自分のイメージを的確に伝えられるか」なので、みんながみんな職人的超絶グラフィックデザイナーにならなくてもよく、

これからは私みたいなデザインしないアートディレクターももっと増えても良いのでは? って最近凄く思っています。デザインは手段であって解決方法がイケてるデザインやアウトプットがなくても明確なゴールイメージをして、事業成長やヴィジョン制定をかなりの解像度で言語化してスタッフを率いて提案できる。そんなことに役立つ人材はこれからかなり求められる。そんなアートディレクターがもっといてもいいのでは?

 

博報堂の人事史上初の美大出身の脱デザイナー1号

博報堂の面接を受けたときに私の初期配属のボスのMさんに言われたのは「船木くんはデザインは全然ヘタだけどこのアイデアノートはおもしろいね。」「最終面接はこの無理矢理作ったポスターとか持ってこないでこのへんなアイデアノートが良いからそれで最終面接挑めば?」とアドバイスされました。で、入社させていただき、なんと初期配属の職種がデザイナーでは無く、CMプラナーでした。
    
博報堂は美大のデザイナー採用枠という特別採用枠があり通常はデザイナー採用のみでした。当時の私は博報堂の人事史上初の美大出身の脱デザイナー1号だったのです。デザインしなくていいデザイナーが採用されたって事。Mグループでそうとう鍛えられました。

美大採用なのにいう越境人事判断で、初属CMプラナー配属で6歳年上の爆笑Aプラナーさんの下で修行させてもらえた事は今でも感謝しています。あの時デザイナーさんの下でデザイン修行していたらデザインがヘタな自分は迷走していたかもしれません。

 

越境マインドの源泉

私のケトルの越境マインドの原点はあの時、デザインがヘタだけど、アイデアはおもしろい! って言ってくれたMさんにあるのです。

だからこの立場になった今、この越境マインドを次に託さないとって思ってます。頑張れ! 悩めるデザイナー、アートディレクター達! ぼくらは一枚絵職人じゃないよ。

当時の2006年雑誌ポパイの美大特集に載った私。

 

 

船木研
1972年神奈川県生まれ。1996年に博報堂入社後、ケトラー唯一のアート系出身CDならではの視点を活かして、企業ロゴ開発からCM、イベント、PR、インテグレートキャンペーンまでメディアにとらわれず手がけている。カンヌ広告祭シルバー、クリオ広告祭ゴールド、ニューヨークADCゴールド、D&ADイエローペンシル、ロンドン国際ゴールド、アジア太平洋広告祭ゴールド、スパイクスゴールド、JR交通広告賞企画賞、読売出版広告賞銀賞、日経広告賞順部門賞、日本イベント大賞グランプリ、JPPプロモーションプランニングアワード金賞受賞、ケトルの赤坂オフィスデザインでグッドデザイン賞など。
  • SHARE THIS PAGE