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連載 : プロデューサー道

2020/01/08

ローカルおじさんが語るプロデュース論<後編>

日野昌暢

あけましておめでとうございます。博報堂ケトルのプロデューサーである、日野昌暢の日々を綴る連載「プロデューサー道」の第3回です。今年もよろしくお願いいたします!

僕がいる広告業界の仕事では、目に見える「クリエイティブ」の側面に注目が集まりますが、一つのプロジェクトに、いろんな思いや欲やスキルを持つ人たちが多様にいるのが常。その個性や思惑の渦の中では、様々な問題が巻き起こります(ほんとうに!)。その真ん中に立つ人がいて、プロジェクトがうまく運ぶようにすべての人とコミュニケーションをとりながら取り計らっていくプロデュースが必要で、広告会社では、営業やクリエイティブディレクターをしている人などが、この個性と渦の中でプロデュース力を身につけています。

”地域活性”においても、広告と同じように生活者へのコミュニケーションが必要なので、その接点においては「クリエイティブ」が有効に作用するのは間違いないのですが、その手前に「プロデュース」を効かせることが、それ以上に大事だと僕は感じています。ここで言う「プロデュース」は、地域にいる人やコトやモノの関係性をどう編集するかということです。特に人。地域の活性は、外から来た人だけでできるものではなく、その地域に生きる人が作るものであり、その人たちが続けていくものだからです。

僕が地域の仕事をさせていただく時に最初にすることは、その地域ですでに行動を起こし、実践している人を地域でヒアリングし、実際に会いにいくことです。僕らのような東京の(地域外の)会社の人が “よそ者”として地域に関わる場合には、すでに行動を起こしている人からすれば、いい気がしないのが普通です。地元の想いある人から「なんだよ、あれ」と思われてしまうと、作戦はうまくいかない。だからこそ、どんな想いを持って何が行われているのかを知ることはとても重要だと僕は考えています。

地域活性の領域で行動を起こしている人は、会社員として働いている人とは違って、仕事だから何かをやっているというよりは、意義があるからやっている場合が多いです。稼ぐための本業があった上で、地域のためにパブリックマインドをもって街で何かを起こしている方が多い。その方々に、僕らが地域で見つけた課題と、その解決方法の企画アイデアを共有して、心情的に仲間になってもらえるかの反応を見たりします。そういった、想いある人たちが一定の賛同をしてくれるのであれば、その企画は可能性があるなと僕は思います。

一方で、地域にずっといる人は、その地域のいいところが”あたりまえ”すぎて、見つけられないということは往々にしてあります。そこには、地域外の僕たちだから見える「外から目線」が有効に働く。この「外から目線」と、地域に生きる人の「内からのチカラ」を両方使うというプロデュースを僕は大事にしています。

次回以降は、僕がそういう感覚を持つようになった実際のお仕事の話も交えていきたいと思います。それではまた!

日野昌暢
1975年福岡県福岡市生まれ。2000年 九州芸術工科大学 芸術工学府 生活環境専攻修了。同年4月に博報堂入社。14年間の営業職を経て2014年よりケトルに加入。

「預かったご予算を着実な効果にしてお戻しする」という強い想いとともに、何が社会を良くするのか?を考えるデザイン発想で、事業企画や商品開発から、PR、プロモーション、マスメディアでの広告などまで、幅広い経験を活かした統合プロデュースを手がける。

また「本質的な地域活性」をマイテーマに、“外から目線”で地域資産を再編集し、地域のプレイヤーの“関わりしろ”を作りながら、事業、プロジェクト、プロダクトを共創し、開発して、情報発信を行っていくことを得意とする通称”ローカルおじさん”。

2020年には九州を取材テリトリーにしたローカル発Webメディア Qualities(クオリティーズ)を企画プロデュースし、創刊編集長。観光庁や文化庁の採択事業者へのコーチングなども多数行っている。

主な受賞歴に、2度のACC TOKYO CREATIVE AWARD グランプリ(2018,2022)、グッドデザイン賞BEST100(2022)、Spikes Asia ゴールド(2019)、カンヌライオンズ ブロンズ(2013,2019)、ADFEST ゴールド(2019)など。
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