SHARE THIS PAGE

ようこそ
カテゴリ
会社情報
閉じる
連載 : プロデューサー道

2021/01/15

博報堂ケトルのローカルおじさん。2021年の展望は!?

日野昌暢

博報堂ケトルのプロデューサーである、ローカルおじさんこと日野昌暢の日々を綴る連載「プロデューサー道」の第10回です。2020年はコロナ禍で大変でしたが、いろんな地域の方々と、仕事や取材をさせていただく立場としては、リモートで会うことがスタンダードになったことで可能性が広がった年でもあり、首都圏で密して暮らすよりも「疎」である場所での暮らしに安心や価値が出てきたという流れも出てきたという一年でした。

2020年に目的地として伺った地域を数えてみました。プライベートも合わせると32府県、75市町村(東京を除く)。出張日数は125日。2020年3月までお世話になった広島県や、今年度のうるま市(沖縄)や朝倉市(福岡)。観光庁の「令和2年度 夜間・早朝の活用による新たな時間市場の創出事業」で採択された広島県や宮崎市での新規事業プロデュース。南魚沼市(新潟)、天川村(奈良)、七尾市(石川)などにもコーチングという立場で関わらせていただいたり、講演で松山市や岡山市に呼んでいただいたり。2020年6月に立ち上げたローカル発WebメディアQualitiesでの取材で九州各地にも伺いました。

「どこの街が面白かった?」とよく聞かれるのですが、綺麗ごとでも社交辞令でもなく、どこも宝の山だなと思いますし、どこも面白いです。私がどこか地域を訪れるのは、面白い人を介していることがほとんどなので、街そのものもさることながら、その地域で街を盛り上げようとしていたり、やりたいことを実現していたりする、生き生きしたみなさんの顔が浮かびます。活性化や実現度の進捗はそれぞれですが、どこの街にも可能性があって、頑張っている人々がいて、素敵な素材や資産があるので、どの街も面白いんです。どう街の資産を編集したら盛り上がるかなって考えるのは本当に楽しいことです。

活性化や実現の度合いですごかった地域を強いてあげるとすれば岡山県西粟倉村です。地域活性の話としては有名な地域なので詳しくはネットや書籍などで、ぜひ調べてみて欲しいですが、キーマンの牧大介さんがターニングポイントになる『株式会社西粟倉・森の学校』を立ち上げたのが2009年なので、今に至るまで10年以上も重ねてこられているし、これからの新しい動きもどんどん生まれていました。それらを支える人材の集積や育成、継続できる事業収益性が作られていました。そこに至るまで西粟倉のみなさんも幾度とない苦難を10年来も乗り越えてある今ですから、時間はやっぱりかかるのだなとも思いました。

もう一つ挙げるとすれば、大分県別府市です。別府の再活性への動きは2000年頃。街の活性化には、街の人が地元を知るところから始まるべきという考えから「別府オンパク」という町歩きイベントが始まり、インナーからの動きで街を活性していきます。それをフランスはパリで見たという大分出身のアーティスト山出淳也さんが別府に帰国して、別府現代アートフェスティバル「混浴温泉世界」を始めたのが2009年です。今もそれらから始まった動きが、人材の集積や育成を産み、様々なプレイヤーが新しい事業を作っています。やっぱり10年や20年かかって取り組んでおられる。

 国が2014年ごろから打ち出した「地方創生」は、現状ではうまくいっていないと言われていますし、政策としてばらまいた予算に見合うような成果は出てないわけですが、「地方創生」であろうとなかろうと、ローカルでの暮らしへの回帰やシフトというのはちゃんと進んでいるとも感じた2020年でした。きっかけが地方創生だったり、コロナ禍だったり、働き方改革だったり、QOL向上だったり、エシカルだったりで、どれでもよくて、自分の頭で考えて、自分で暮らしを作る人が増えれば、地域にプレイヤーが増えるし、その人たちが暮らしを成立させていけば、その背中を見て倣う人たちも増えてくるんじゃないかなと思えるんですよね。地方創生から10年と考えると2025年くらいには!? いや! コロナ禍で加速をして今年から来年あたりには!? 日本各地で面白い地域がどんどん出てくるんじゃないかなと思えます。

私も本当はどこかの地域にどっしりと根を張って集中して一つの事業に取り組みたい思いもありますが、今のように、いろんな場所に行って、いろんな方々と関わらせていただける状況や環境はなかなかないと自分でも思うので、この立場からしか見えないものを世の役に立てられるように頑張るのがいいのかなと思っています。2021年にご一緒させていただく方々と共に、新しい事業を立ち上げて2022年を迎えたいと思います。では、今年も”ローカルおじさん” をよろしくお願いいたします。

▼2020年に目的地としてお伺いさせていただいた街

岩手県 紫波町/盛岡市
山形県 南陽市
福島県 福島市/会津若松市/郡山市
茨城県 境町
埼玉県 越谷市
千葉県 木更津市
群馬県 高崎市/草津町
神奈川県 横浜市/小田原市/山北町
長野県 長野市/信濃町/軽井沢町/諏訪市
新潟県 南魚沼市/十日町市
石川県 七尾市/加賀市/金沢市
富山県 高岡市/氷見市
福井県 福井市/勝山市
愛知県 名古屋市/常滑市
滋賀県 長浜市
奈良県 天川村/吉野町/御所市
京都府 京都市
兵庫県 宝塚市/淡路島
岡山県 岡山市/西粟倉村/倉敷市
島根県 益田市/浜田市/邑南町
広島県 広島市/庄原市/福山市/呉市/廿日市市/竹原市/大崎上島町
愛媛県 松山市
香川県 小豆島町/高松市/直島町/土庄町
徳島県 徳島市
福岡県 福岡市/朝倉市/久留米市/八女市/北九州市/筑前市/太宰府市/糸島市/那珂川市
佐賀県 嬉野市/唐津市/小城市/鳥栖市
長崎県 五島市
大分県 別府市/大分市
熊本県 熊本市/玉名市
宮崎県 宮崎市/都農町
鹿児島県 鹿児島市/枕崎市/薩摩川内市/頴娃町
沖縄県 那覇市/うるま市/沖縄市/大宜味村/金武町

写真は鹿児島県薩摩川内市のHUB “satsuma-sendai city”にて。
左から運営の有川大輔さん/代表の大上泰弘さん/RE:PUBLIC 田村大さん/私/Qualities ライターのやましたよしみさん/ケトル 伊集院

日野昌暢
1975年福岡県福岡市生まれ。2000年 九州芸術工科大学 芸術工学府 生活環境専攻修了。同年4月に博報堂入社。14年間の営業職を経て2014年よりケトルに加入。

「預かったご予算を着実な効果にしてお戻しする」という強い想いとともに、何が社会を良くするのか?を考えるデザイン発想で、事業企画や商品開発から、PR、プロモーション、マスメディアでの広告などまで、幅広い経験を活かした統合プロデュースを手がける。

また「本質的な地域活性」をマイテーマに、“外から目線”で地域資産を再編集し、地域のプレイヤーの“関わりしろ”を作りながら、事業、プロジェクト、プロダクトを共創し、開発して、情報発信を行っていくことを得意とする通称”ローカルおじさん”。

2020年には九州を取材テリトリーにしたローカル発Webメディア Qualities(クオリティーズ)を企画プロデュースし、創刊編集長。観光庁や文化庁の採択事業者へのコーチングなども多数行っている。

主な受賞歴に、2度のACC TOKYO CREATIVE AWARD グランプリ(2018,2022)、グッドデザイン賞BEST100(2022)、Spikes Asia ゴールド(2019)、カンヌライオンズ ブロンズ(2013,2019)、ADFEST ゴールド(2019)など。
  • SHARE THIS PAGE