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連載 : ”ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負

2021/05/12

“ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負 vol.7 神吉佳奈子×大和桜酒造×中村酒造場×黒木本店×柳田酒造×日野昌暢 「伝統×革新 あなたの知らない“クラフト焼酎”の美味しい世界」『読本 本格焼酎。』(プレジデント社)刊行記念 前編

日野昌暢

“ローカルおじさん”こと博報堂ケトルの日野昌暢(『絶メシリスト』プロデューサーなど)が、本質的な地域活性を実践する方々をお招きするローカルシリーズ十番勝負、第7戦のテーマは「焼酎」。

4月に刊行された『読本 本格焼酎。』の編集を担当した神吉佳奈子さんと、九州の若き杜氏4人をゲストにお迎えします。

鹿児島からは「大和桜酒造」の5代目・若松徹幹さんと「中村酒造場」の6代目・中村慎弥さん、宮崎からは「黒木本店」の5代目・黒木信作さんと「柳田酒造」の5代目・柳田正さん。

古くはライバル関係にあった鹿児島と宮崎の焼酎ですが、老舗としての伝統や技術を守りつつも、そうしたしがらみは打破して新しいものを生み出していこうとする、焼酎界のトップランナーが一堂に会します。

世界的にブームとなった「クラフトジン」の次のブームとなりうる可能性を秘めているのは、焼酎とも言われ、世界からの蔵の視察も増えてきているそうです。

しかしそのためには、九州全体として向き合わなければいけない課題や困難があるのも事実です。どう打破し、何を世界に発信していくのか。そして四者四様の焼酎と、焼酎造りにかける思い。

聞けば、実際に味わいたくなること間違いなし。そんな焼酎好きはもちろん、食分野で注目の「麹と発酵」「クラフト蒸留酒」に興味のある方、伝統と革新に悩むビジネスパーソンにも必見のイベントです!


神吉佳奈子(かんき・かなこ)
1969年、広島生まれ。1992年広島女学院大学卒業。NHK出版『きょうの料理』の料理本編集のアシスタントを経て料理編集者に。その後プレジデント社で雑誌『dancyu』や『料理男子』の編集を担当。2013年より『dancyu』編集部副編集長に。現在はフリーランス編集者として、食と農の手仕事を伝えるべくフィールドワークを続けている。

若松徹幹(わかまつ・てっかん)
鹿児島県いちき串木野市に江戸時代末期創業の大和桜酒造5代目。
1977年生まれ。横浜国立大学教育学部を卒業後、広告代理店に勤務。2005年蔵の移転を機に帰郷。鹿児島大学大学院で焼酎学を学んだあと家業に就く。「重く作って軽く売る」という思いを掲げて、カルチャーやフードのシーンに焼酎を発信している。
代表銘柄:大和桜
https://yamatozakura.com

中村慎弥(なかむら・しんや)
鹿児島県霧島市1888年創業の中村酒造場6代目。
1986年生まれ。東京農業大学醸造科学科を卒業した後、山形県の日本酒蔵や酒卸問屋で働いた後家業に就く。最後の阿多杜氏としてその名が知られる上堂薗孝蔵氏のもと酒造りを学び、2017年から杜氏として製造を行う。
代表銘柄:なかむら、玉露
http://nakamurashuzoujo.com

黒木信作(くろき・しんさく)
宮崎県高鍋町に1885年創業の黒木本店5代目。
1988年生まれ。明治大学商学部在学中にワインに出会い、卒業後フランスへ1年間留学し、ワイナリーで働く。帰国後、酒類総合研究所で醸造学を学び、2012年家業に就く。2020年代表取締役社長に就任。兄が代表をつとめる農業法人「甦る大地の会」を運営。循環型の焼酎造りに取り組んでいる。
代表銘柄:㐂六、百年の孤独、中々、山ねこ
https://www.kurokihonten.co.jp

柳田正(やなぎた・ただし)
宮崎県都城市に1902年創業の柳田酒造5代目。
1973年生まれ。東京農工大学大学院で情報工学終了後、富士ゼロックス入社。開発職として4年間勤めた後、28歳で家業に就く。2010年に代表に就任。蒸留器を改良するなど実験を重ねて創意工夫する焼酎造りは元エンジニアならでは。
代表銘柄:駒、青鹿毛、赤鹿毛、千本桜
http://www.yanagita.co.jp


日野:ローカルおじさんの地域活性のホント十番勝負の第7戦目。これを企画した元『dancyu』副編集長の神吉さんと、『本格焼酎読本』の編集を通じて集まっていただいた蔵元さん4名です。

(写真左上:柳田正さん、左下:神吉佳奈子さん、中央上:中村慎弥さん、中央下:黒木信作さん、右下:若松徹幹さん、右上:日野昌暢。以下敬称略)

日野:神吉さんの自己紹介を最初にしていただいて、その後4つの蔵元の皆さんに自己紹介して頂こうと思います。

今、焼酎が面白い

神吉:フリー編集者の神吉と申します。5月に発売したこの本格焼酎というプレジデント社のムック『読本 本格焼酎』の編集チームの中に入って、企画を担当しました。

神吉:ずっと焼酎の取材を続けていて、私が日本で一番焼酎を面白がっている編集者だと思っています(笑)。今日は焼酎の面白さを感じていただきたいということで皆さんに来ていただきました。じゃあそれぞれ自己紹介お願いいたします。

東京まで吹いてきた焼酎ブームの風

若松:皆さん、なかには初めましての方もいらっしゃると思います。「大和桜酒造」の若松徹幹と言います。最近こんな新しいのを造りました。

日野:オシャレ。

若松:うん、オシャレな蔵元です(笑)。
僕が杜氏で、後はパートのおばちゃんとおじちゃんとだけでやっている本当に小さな蔵です。10年くらい前は東京で別の仕事をしていたんですけど、焼酎ブームで蔵に戻ってきました。東京の恵比寿で、うちの蔵の焼酎がラインナップされているお店に行って。そこの大将に、この蔵の息子さんは東京で働いてて、蔵に戻るかどうか分からないから貴重だぜと言われて、大爆笑したんですけど。

神吉:俺? って感じですね。

若松:それがきっかけで、このブームは本当だなと思って帰ってきました。

日野:なるほど、焼酎ブームはどのくらい続いたんですか?

黒木:第3次ブームが大体2004年ぐらいから伸びてきて、2007、2008年がピークです。

日野:結構長く続いたんですね。

希少性が売りになった時代

神吉:次に中村さん、鹿児島から。

中村:はい、ありがとうございます。鹿児島県霧島市の国分にある、「中村酒造場」の中村慎弥と申します。よろしくお願いします。

日野:よろしくお願いします。

中村:柳田さんとか徹幹さんは、第3次焼酎ブームを経験している世代だと思うんですけど、僕はその時まだ大学生で、なんとなく自分たちの家業の焼酎がにぎわってるなぐらいの感じで。小学生くらいの時は本当に全然売れなくて、いつ会社潰れてもおかしくないと言ってて。そういう状態から東京の方々がこぞって欲しがるようになったのは、やっぱりうれしくて。で、少しずつ憧れだったりとか、かっこいいなと思って、東京農業大学に行かせていただいて、山形県の日本酒蔵で2年。大阪の地場問屋さんで2年修行して、8年前に帰ってきました。

日野:なるほどなるほど。中村さんのボトルありますか?

中村:あ、ごめんなさい。うちの「なかむら」という焼酎を。

日野:やっぱりそうですね。あ、「玉露」もそうなんですね。

中村:うん、そうなんですよ。

日野:「なかむら」といえば焼酎ブームの時によく見かけたというか、いい値段がついていた印象があって。今も買おうとしても売り切れになっている印象がある。

中村:徹幹さんのところよりは作ってるんですけど、うちも少量生産高品質をうたい文句にして、全部手作りなので、そもそもの量が少なくて。第3次焼酎ブームの話は、幻の焼酎ブームと言って、希少性が1つの価値でした。

自然の中を循環する作り方

黒木:うちは蔵、会社が3つに分かれているんですよ。「黒木本店」という自分が5代目の蔵と、「尾鈴山」という地元の山の中に新しく作った蔵と、農業法人で、要は原料を販売する畑ですね。まず、「黒木本店」の銘柄でいうと、「㐂六」とか、このあと登場する「㐂六の無濾過」。これとても美味しいですよ。うちの自社農園で全て無農薬で作っているすごい香りが高い芋焼酎。

黒木:一番有名なのは、「百年の孤独」と、「中々」で麦焼酎。居酒屋で見かけられた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

黒木:あとは米。芋麦米といういろんな原料のバラエティーが3種類と豊富な蔵です。宮崎の特徴でもあります。

もう1つが山の中の自然の中で、手仕込み、手作り「尾鈴山蒸溜所」。
僕が一番好きな蔵で、芋麦米同じくラインナップしていますが、全部「黒木本店」とは品種や造り方が違って、違う味わいの、「山ねこ」、「山猿」、「山翡翠」。

黒木:最近は自分の試験仕込みとか、小仕込みした限定もので、右側にあるこういうものも好評をいただいております。さらには麹を使ったジンや麹の造り方で麦芽から、麦から栽培して手作りするウイスキーも始めています。焼酎は機械で作られていることが多いんですけど、うちは地元の杉の甑(こしき)でサウナみたいに木で蒸して、手仕事で麹を作っています。発酵も木桶。こういう蔵は、私が知る限り他にはございません。

で、農業法人がうちの畑なんですけど、芋麦米とか焼酎の原料をベースに、最近だと野菜もやっております。

 

日野:すごい。

黒木:ほうれん草も僕が食べたくて。あとは焼酎の原料だけ栽培してても焼酎飲まない人とか次の飲み手になる子供たちには伝わらないなと思ったんで、新たに野菜のプロジェクトも知り合いの飲食店さんと一緒に始めて。そしたらみんなにお勧めできる。なので、自分の所の特徴は、焼酎を作ったらできちゃう焼酎カスを自社で肥料に変えてる。

日野:おー。

黒木:肥料を作っても使う人がいなかったんですね。農家さんやっぱり保守的な方、決まった作り方のある方が多いんでなので、自分たちで畑を作って、まず実践していこうと。そしたらどんどん農業自身も面白くなって。土を作ったらまた原料ができる。原料ができたら焼酎ができると、ぐるぐる自然と循環するスタイルでものづくりをやっております

日野:サーキュラーエコノミーというやつですね。

黒木:とても今トレンドですけど、昔から変わらずやってます。この造りじゃないとうちの味は出せないと思って、循環だったりそういった部分に取り組んでおります。

実は足元に究極のものづくりがあった

神吉:最後は柳田さんお願いします。

柳田:柳田正と申します。「柳田酒造」の5代目でございます。「青鹿毛」という焼酎を作っています。

柳田:都城市は、宮崎県と鹿児島県のちょうど県境になります。元々畜産が盛んな街なんですが、近年は焼酎の日本一になった「霧島酒造」さんのお膝元です。この都城市で一番古い歴史を有しているのが「柳田酒造」でして、創業は明治35年、1902年と聞いています。その前、江戸時代は、島津藩の政策で菜種油から油を取る精油場をしていたと聞いています。そこから独立して焼酎造りを専業するようになってから、今年で118年目になります。

日野:118年目。

柳田:はい。で、私はこの「柳田酒造」に次男として生まれまして、兄が中村君とかと同じように東京農大の醸造科に行ったもんですから、子供の時から究極のものづくりがしたいと、大学も工学部を出て東京の富士ゼロックスという複写機を作っている会社で研究開発職をしていました。父が難病を発症して28の時に蔵に帰ることになったんです。別の仕事をしたいと言った兄に成り代わって蔵についた、ちょっと変わった経歴です。でも結局帰ってきて焼酎造りをしたら、実はこんな足元に究極のものづくりの現場があったんだと。で、この「赤鹿毛」という焼酎が私のデビュー作なんですけども、元々うちにあった蒸留機が日本酒の蔵元から来た粕取り蒸留するタイプだったんです。それを改造して、ちょっと変わった麦焼酎を作ったのがきっかけで、それ以降蒸留機とかも変えながら、さまざまな焼酎を作っております。

神吉:元々芋焼酎をつくっていらしたのですが、先代のお父さんの時代に麦焼酎に切り替えてしまいました。それで柳田さんの時代で「千本桜」という芋焼酎を復活させたんです。

柳田:はい。元々芋焼酎の「千本桜」を創業以来作ってたんですけど、蔵を存続させるために大手さんとは違うニッチなところで生き延びなきゃいけないということで、麦を専業にしていましたが、7年前に「千本桜」を復活させました。

神吉:柳田さんは、本の中でも焼酎業界のエジソンと取り上げられてます。

日野:ほうー。それは発明をされているから。

神吉:元エンジニアで、工学部も出てらっしゃるので、蒸留器を自分で直したりとかちょっと理系の造り手なんです。

日野:後で話があると思うんですけど、この画がやっぱ凄い強いというか、オレンジ色になる芋で、芋を寝かせて熟成させて作ってる。

YES or NO で気になる本音を聞いてみた

日野:今日は柳田さんの所のお酒を飲みながらやっております。B&Bは「Book&Beer」でビールを飲みながらイベントを聞くというのをやってきたので、皆さんも飲むことを許されるのであれば、ぜひ飲みながらやるといいんじゃないかなと。

神吉:せっかくだから、向こう側で飲んでる人もいるかもしれないので、乾杯で始めますか。はいじゃあ、いい話ができますように。乾杯。

日野:はい、乾杯―。

神吉:よろしくお願いします。じゃあ早速ですけど、あらかじめYESとNOの札をご用意いただいているので、ここから4人にどんな考えを持ってるのかという10の質問をしたいと思います。綺麗事なしで本音でお答えください。では皆さんよろしいでしょうか。
はい、では、

1.宮崎には負けたくない鹿児島には負けたくないと思っている。

2.九州の造り手はワンチームでまとまっている。

3.焼酎ブームは再び起こる、起きる。焼酎ブームは再びくる。

4.焼酎で風土の味が作れる。まあテロワールというかね。

5.自分は先代と焼酎の造り方を変えている、変えました。

6.昨年より美味しい焼酎を作る自信がある。

7.今焼酎造りが面白くて仕方ない。

8.焼酎は割り方で味が変わる。

9.世界のスピリッツと勝負したい。

10.焼酎の未来は明るい。

お互いにどこか意識している存在

神吉:じゃあまず宮崎と鹿児島の関係というか、どうやって切磋琢磨してるか。

日野:県で分かれているものの、地続きにある中で、宮崎と鹿児島の焼酎蔵の関係はどういう感じなんですかね。皆さんは業界の中の人だから感覚があると思うので、教えていただけないかなと。

若松:とりあえず印象的なのは、出荷量が宮崎に抜かれたことが話題になったじゃないですか。ぶっちゃけ焼酎と言ったら鹿児島。薩摩焼酎のイメージがある中で、宮崎の霧島さんがトップを取られた時に、ざわつくわけじゃないですか。

日野:宮崎から見てどうですか? 鹿児島に対してという思いがあったりするんですか?

柳田:宮崎はそんなに打倒鹿児島とか意識したことがないので、逆に抜いちゃったことで、鹿児島がメラメラとライバル心を燃やしてんだなととても感じるようになりましたね。

黒木:めちゃくちゃチャンピオンの余裕みたいな。

神吉:ほんとだ(笑)。

若松:これが鹿児島をまたイライラさせるんですよ。霧島に負けてるだけなのに、なんか宮崎に負けてるみたいになってるみたいな。

黒木:でもやっぱり県が1位になると、地元の人も盛り上がってます。宮崎が1位なんだ、もっと飲まなきゃ! みたいな流れもあってより差が開いたんですよ。

若松:和牛とかいろんなジャンルで競ってたので、それもあると思いますね。

黒木:あと宮崎で面白い話は、芋焼酎の原料をさつまいもと書かないんです。薩摩じゃなくて宮崎なので。うちのメーカーだと甘藷と書いてます。

日野:本当だ! 面白いなー。甘薯、薩摩と書いてなるものかと。

 

黒木:土地のこだわりみたいなものが意外とあるのかなと思います。

ポジティブに切磋琢磨する

神吉:ライバル関係でお互いにチリチリと意識しながら、焼酎を盛り上げていこうみたいな動きは、ここ5年6年変わってきましたよね。中村さんその辺どうですか。

中村: うーん、そうですね。構図としては、鹿児島vs宮崎みたいに言ってるんですけど、正直言ったら僕たちはオフシーズンに東京のイベントで一緒になることが多くて、実際は仲いいですよ。

神吉:うんうん。

中村:根底のところで、あっちがすごいことやってるんだったら、僕たちはもっとすごいことやろうぜというポジティブな競争意識があると思っていて。その中でここ4、5年は親父たちの世代の方たちが、いい意味で僕たちの世代にバトンタッチしてくれてるので、焼酎の味わいもそうだし、新しい銘柄もそうだし、蔵元の個性とキャラクターが前に出てこれるようになった。焼酎は元々面白いんですけど、それを面白がれる人たちがどんどん増えてきた

若松:自分の親父たちの代は全然売れない時代があったんですよね。めちゃめちゃレッドオーシャンだったんですよね。ブームがあっていい意味で、焼酎という選択肢が増えた中で、自分たちにもブームの恩恵が来て、ちょっとブルーオーシャンになってきて。でもブームが降りてきてやばいと思って。そこでみんなで争っている場合じゃなくて、切磋琢磨して行かないといけないという危機感から、情報交換とか逆に、その相手のいいところとか、ポジティブに共有していくようになったのがありますね。

上辺のブームにならないように

日野:焼酎ブームは再び起こるかという質問にNOと答えた方はどなたでしたっけ。

若松:鹿児島の2人でした。

日野:僕は焼酎大好き人間なので、ああいう形でのブームじゃないちゃんとした、みんなが焼酎を飲む時代がくるのかなーと希望的観測的に思ってるんですけど、どんな感じで鹿児島のお2人はNOを挙げられたんでしょうか。

若松:第3次焼酎ブームみたいなブームは来ないということだと思います。希少性だったり、訳も分からずみんなが飲むみたいな感じではなくなってきて、焼酎が面白がられて新しい再評価も含めて飲まれる時代。それを第4次ブームと言われたらブームが来るかもしれないですけど。

日野:中村さんも同じようなニュアンスですか?

中村:全く一緒ですよね。だからYESとNOの表裏一体みたいなことだと思います。多くの方々に飲んで欲しいという気持ちは誰も持ってますけど、上辺だけのブームにならないように、ちゃんと地に足のついたブームを起こせたらいいなという意味で、ブームとは違うかなと思います。

蔵ではビッグバンが起きている

日野:そういう意味で言うとYESを挙げられた2人もかなり近いニュアンスなのかもしれないですけど、YESをあげた方。

日野;では黒木さん、どうですか。

黒木:焼酎を造り続けて変えていけば、またトレンドとして上がってくるタイミングが来るだろうなというY E S。もし世界市場でトレンドになったら、それ以上の需要求められるので、もっと大きな波もくる。そのために僕らは行動を続けたいなと思っています。

日野:うんうん。柳田さんどうですか。

柳田:明らかに10年前15年前には無かったタイプの焼酎がどんどんもう、目まぐるしく出てきてますし。伝統的なものを守り続けている蔵元ですらかなりのクオリティが出てきてるんですね。

日野:うんうん。

柳田:自分では結構積極的にいろんな新しい取り組みをしていると思っているんですけど、自分も焦るぐらいにいろんな蔵がいろんな取り組みをされて、ビッグバンのように新しいうねりが来てるので、時間の問題かな。あと若い人がウイスキーのハイボールを飲んで、蒸留酒に対して抵抗なくしているので。誰かがこのトリガーを引いた時がタイミングだと思う。

甘くない焼酎の世界

神吉:2番の九州の造り手はワンチームでまとまってるというところですね。

日野:うん、NOが多かったですよね。

神吉:東京にいると九州が焼酎の産地とみんなが思っているので、各県が盛り上がっていらっしゃる中でワンチームという意識に変わりつつあるのかなという期待の質問だったんですけど、どうでしょうか。

中村:そうですね、足を引っ張っているということではないんですけど。マーケットが広がったことによって目指すべきものがそれぞれ違うので、「ワンチームじゃない」と僕は答えたんですけど。みんな、焼酎を盛り上げたいという気持ちは同じだと思うので。例えば世界に僕たちは出て行きたいと言っているけど、別に世界は見ていない蔵元さんもいて。その蔵元さんたちを否定はしないですね。

神吉:徹幹さんはどうですかね。

若松:そうですね、物理的にワンチームになるべく、仕組みを作る動きがここ数ヶ月でようやく動き始めていて。ここからまた新しい流れが出てくるのが楽しみでもありつつ、中村くんの言ったようにそれぞれが見てるビジョンが違ったりとかやり方が違ったり。経営状況もコントラストが鮮明になってきているので。各々が自分で酒造りから経営から全部やっていかないと。互助会で助けてもらうような、甘い世界ではなくなってくるだろうなという意味で、ワンチームは厳しいのかなとNOを出しました。

(中編に続きます)

日野昌暢
1975年福岡県福岡市生まれ。2000年 九州芸術工科大学 芸術工学府 生活環境専攻修了。同年4月に博報堂入社。14年間の営業職を経て2014年よりケトルに加入。

「預かったご予算を着実な効果にしてお戻しする」という強い想いとともに、何が社会を良くするのか?を考えるデザイン発想で、事業企画や商品開発から、PR、プロモーション、マスメディアでの広告などまで、幅広い経験を活かした統合プロデュースを手がける。

また「本質的な地域活性」をマイテーマに、“外から目線”で地域資産を再編集し、地域のプレイヤーの“関わりしろ”を作りながら、事業、プロジェクト、プロダクトを共創し、開発して、情報発信を行っていくことを得意とする通称”ローカルおじさん”。

2020年には九州を取材テリトリーにしたローカル発Webメディア Qualities(クオリティーズ)を企画プロデュースし、創刊編集長。観光庁や文化庁の採択事業者へのコーチングなども多数行っている。

主な受賞歴に、2度のACC TOKYO CREATIVE AWARD グランプリ(2018,2022)、グッドデザイン賞BEST100(2022)、Spikes Asia ゴールド(2019)、カンヌライオンズ ブロンズ(2013,2019)、ADFEST ゴールド(2019)など。
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