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連載 : ”ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負

2021/05/12

“ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負 vol.7 神吉佳奈子×大和桜酒造×中村酒造場×黒木本店×柳田酒造×日野昌暢「伝統×革新 あなたの知らない“クラフト焼酎”の美味しい世界」 『読本 本格焼酎。』(プレジデント社)刊行記念 中編

日野昌暢

“ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負 vol.7
神吉佳奈子×大和桜酒造×中村酒造場×黒木本店×柳田酒造×日野昌暢 前編はこちら▼

“ローカルおじさん”の地域活性のホント 十番勝負 vol.7 神吉佳奈子×大和桜酒造×中村酒造場×黒木本店×柳田酒造×日野昌暢「伝統×革新 あなたの知らない“クラフト焼酎”の美味しい世界」『読本 本格焼酎。』(プレジデント社)刊行記念 前編

前編では、造り手の方の本音を聞く中で、切磋琢磨し合うライバル関係があることも見えてきました。中編では、各蔵がこだわっている焼酎ごとの違いをどうやって消費者に伝えていくかを考えます。

興味が向けられない焼酎ごとの違い

神吉:今回の4人、4つの蔵の焼酎、酒質のアプローチも蔵の規模も違うんですね。でも、味わいの違いは日本酒ほど感じにくいので、分からないという人が多い。焼酎が去年よりどう変わってるんだろうとか、今年の焼酎はどんな面白いことが起きてるんだろうというところに、興味がいかないと思うんですよね。でも皆さんYESを挙げていらっしゃったので、何が変わっていて、どういうことされてるかを聞いていきたいですね。九州人で焼酎は好きだけど、そんなにこだわってませんと日野さん仰っていて。とてもこういう方が多いと思うんですよね。

日野:完全に第3次焼酎ブームのせいなんですよ。上京してすぐの頃、お店で芋焼酎を注文しようとした時に、先輩に「芋焼酎とか飲むんだー? そんなの東京にはねーよ」と言われてとても腹が立って。その後に霧島さんとか頑張って進出してきたりだとか、ブームでみんなが飲み始めたりとかで、どの焼酎が美味しいかをよく聞かれたんですよね。でもなんか珍しいものが美味しいみたいな飲み方をしている人たちに踊らされないぞと思ってたので、大学の時から飲んでいるような普通ので十分美味しいから、違いなんてないと言っていたんです。

でも、実際は最近『Qualities』の記事で連れて行っていただいたお店で、飲み比べると、全然違って。でも、みんなそこまで考えて飲んでないのが実情であることは間違いなくて、ただ「芋ロック」と頼むわけで。それで皆さん楽しまれているから、それは別に否定するべき事ではないんですけど。いろいろ話せるようになると変わってくるので、それにつながるような情報を『Qualities』で出していきたいなと思っているんです。

興味がない人にもこだわりをわかりやすく

黒木:どれだけ興味と専門性を持っているかで、変わってると感じるかの違いがあると思うんです。車に興味ない人にとっては多分カローラが毎年変わってると気づかない

ただ僕らもそう思われているんだったら、それをわかりやすくしないといけないと思って。さっき商品紹介の時に「山ねこ」の限定版を出してますって言いましたけど、ああいう風に視覚的にも、いつもの「山ねこ」と違うと打ち出してみたり。あとは麹を作る時に地元の木で蒸すようにしているんですけど、それを変えた時にじゃあ米も変えてみようと思って。今まで飯米のヒノヒカリでやってますけど、酒米の山田錦でやってみたりとか、麹違いで限定で出したりして。造りをどんどん変えているのをより分かるように。飲み比べて、明らかに香り違う! みたいな提案は僕らもやっています。

今はSNSもあるので、インスタグラムとかで今こういうことやってますよとストーリーとか投稿であげたりしています。

神吉:麹違いをやろうと思ったのは何がきっかけだったんですか。

黒木:ずっと一貫して焼酎は大地の香水だといってるんですけども。より自社の畑の香りを出したいと思って、日々自然との対話みたいな形での積み重ねをしていて。酵素から芋の香りを切り取って、蒸留に移っていくとこを変えたいなと思ってやっていて。ただ麹だけ変えたわけではなくて、蒸留器も変えたり、洗米のための設備を変えたり、発酵の仕方や仕込みの比率も変えて限定盤が出ていたんですね。いい麹ができたので一般的な、芋と米麹の比率ではなくて芋の比率を変えたり、出し方を変えると香りが変わるので。

 

飲まれる前に勝負が決まってしまう

神吉:自分たちはもうちょっと前に行こう、前に行こうと毎年進んでるのに、進化しているところがなかなか伝わりにくいというところがね。それは日本酒に比べてと言うとおかしいのかな。

若松:うーん、そうですね。今の話を「そうだね」と理解できる蔵元の数が圧倒的に少ないですね。とても大事な話をしていて、やっぱり焼酎を飲まれる前に勝負が決まってしまっているんですよね。この4年ぐらいムック本が出てますけど。雑誌の特集はやっぱり数年インターバルが空いている状況で、興味をもってもらうようなアプローチが出来てないのはあると思いますね。

若松:そこを誰かがやってくれるのを待つんじゃなくて、ここにいるみんな含めて。このイベントもそうだし、どういう風にこの1回きりの試飲会でチャンスを作れるか。去年と同じコピペみたいなイベントだけじゃなくて、1回1回のイベントに対してどうするかを、考えていかないとちょっと厳しいのかなと思います。

 

This is my spirits.

若松:例えば、「ニュークラシック」。こういうラベルを作って出すじゃないですか。

若松:いきなりこんなの出したら、この人何考えてるのかと思われるかもしれないけど、とうとうやってきたというような流れ、伏線をずっと張り続けるんですよ。考え続ける。僕、小さな蔵の中で閉じこもってる時が、一番アイデアが出るんですよ。

仕込みが終わってから、イベントとか新しいことを色々やってるようなイメージがありますけど、蔵の中で芋を洗っている時とか米を洗っている時に、同じ作業をしてる時に全集中していると、いろんなアイデアが出てくる。だから、一番クリエイティブな時間だと僕は思うんです。そういった時間を持つことであの新しいことをしているので、僕はその時間をとても大切にしてますね。

「This is my spirits.」が最近の僕のテーマなんですけど。これは僕自身であるというような気がするんですよね。だから先代を否定してるとか、前の造りがダメだから変えてるとかじゃなくて、前の人がなんでこんなことをしたのかを考える時間とか、なんでこの道具はこのサイズ何だろうとか、行間を読み解いたりする考古学的なアプローチですね。アップデートしている自分、日々バージョンアップしてる自分を出しているので、美味しくなるに決まってるというのがあります。

日野:だから、この本の徹幹さんのページで重く作って軽く売ると書いてあるんですよね。

若松:そうです。僕がすごい苦労して作ってるんですよっていう、お涙頂戴の話はしたくなくて。結構ヘビーに作っているからこそ、僕は誰よりも軽く売ろうという境地にたどり着いたんですよね。

日野:僕、実は「大和桜」を初めて飲んだのは東京で。数年前にとある焼酎の品揃えがとても多いお店に、後輩が連れて行ってくれた時に。僕もそんな焼酎詳しくないから、おすすめありますか? と言ったら大和桜ですと言われて。どうやって飲むのがいいですか? と言ったらソーダ割ですと言われて。えー! となって。それまで芋焼酎をソーダで割って美味しいの? と思ってたんですけど、「大和桜」の紅芋で作ったやつを飲んだらめちゃくちゃ美味しい。こんなのあるのかと思ったのが2、3年前ぐらいですね。

徹幹さんはアプローチとして、飲食店の方々にコミュニケーションを取っていたから、お店の方々はそういうふうにお客さんに発信して来たんだろうなあと思って、すごいハッとした事件がありました。

若松:泣けてくる。

日野:ハッハッハ。

若松:その話だけで明日から頑張れる。

焼酎を伝えるメディア不足

黒木:焼酎はいろいろ変わってるけど、表現が弱かったり。あと自分は表にだして、それなりに売れてるんですけど、でも結局広がりがないんですよね。ワインをイメージすると田崎真也さんとか、ワイン好きの芸能人はみんな思いつく。インフルエンサーというのが浮かぶと思うんですよ。CMするとなるとこの人っているけど、焼酎は誰もインフルエンサー、広める人がいない

日野:焼酎芸人とかいないですよね。

黒木:最近はソムリエでも酒好きの人が出てきてるんですけど。メディアも持ってないし。ワインの専門誌はあるけど焼酎の専門誌がなかったりとか、自分でメディアを作って、こういうことやってますと広げるのは結構限界があるんです。好きな人にはめちゃくちゃ刺さる売り方なんですけど。明らかに焼酎はメディアが不足しているなと思ってます。

酒屋さんを通さずに蔵元さんも発信できたり、酒屋さんと組んでやったり、また全く異業種とのコラボとかの窓口となったり、発信の場みたいなものを今作ろうとしている動きもあるので。そういうのをオンラインサロンじゃないですけど、どんどん会員を増やしたりコラボをして、伝えることまで、努力しないといけないなというのが今年強く感じたことですね。

自分たちなりの焼酎の表現の仕方

神吉:中村さんはどうですか。自分で発信するのは難しいと思う。

中村:新作くんが言ったように、メディアがないのは確かにつらいなと思っていて、例えば音楽とかだったらインディーズのバンドでも、そこそこ取り上げてもらったりとか、面白がって発掘してくれる人がいたり、いろんな角度から解釈してくれる人がいて。マニアな人もそうだけど、知っていく層が増えていくという流れがある。徹幹さんにしても、柳田さんにしても、新作くんにしてもどんどん新しいボトルを新商品として出していて、うちはずっと出してなかったんですよ。

日野:うんうん。

中村:蔵の規模とか、いろんな考え方もあって出せていなくて。実は悔しい思いをしてました。さっきおっしゃったように、例えば同じラベルでね。

 

中村:ラベルが変わったら、何が変わったのかなと思うんですけど、同じラベルでだとお客さんからしたら何が変わってるの? となるのは当然のことだなと思っていて。で、その中で悔しながらに自分はずっと研究を重ねていたので、実は今年は新しく3タイプ作って、来年の頭ぐらいにもしかしたら出すんですけど。

webだったりメディアだったりもいいんですけど、僕たちなりの焼酎の表現の仕方もどんどん大事になってくるかなというところがあって、いろんな方たちがいろんな焼酎を出すことによって、いろんなバリエーションや味わいとか、個性がどんどん伝わってきたので、あと歯車1つで、大きなムーブメントが起きるんじゃないかというのは感じていますね。まあ僕は正直そんなにSNS得意な方じゃないので、難しいなーと思いながらも、どんどん発信していかなきゃなと思って。

神吉:中村さんそれもクローズですか。どんな新商品というのは。

中村:新商品…どうしよう、今言おうかな?

(耳をそばだてる若松さんと柳田さん)

中村:…ってやめて! やめて! やめてよ(笑)。そんな難しい話じゃなくて!

どんどん作っていると、自分の蔵でしか表現できない味わいが出せたらいいなと思えてきて。で、僕は微生物菌がとても魅力だなと思っていて、分解して発酵させていく菌がとても面白いなあと思った時に、自社に生息している酵母や麹菌を自分なりのやり方で見つけ出して、取り出すことができて。麹菌は、白麹、黒麹、黄麹と3タイプあるんですけど、それが全て出現したので。白、黒、黄色全部ハイブリッドのを作っています。

神吉:いろいろ出てきたってことですか。

中村:そうですね。僕の中では5年くらい失敗続きだったんだけど、今年ようやくこれができて。そういう微生物からのアプローチを、自分のファーストステップとしてやってみたいと思っていたところだったので、そこを今回は取り組ませていただいて。
今年はタンクも増えて、新しいチャレンジができる環境を整えて作らせていただいたので。「中村酒造場」とはまた全然違う系統の焼酎がこれから世に出るのかなと思うと、造り手としてはドキドキもしますけど、ワクワクもしている感じですね。

造り手の思いを知ると、一層おいしい

神吉:どうですか日野さん、こういう話を聞くとちょっと飲みたくなりますよね。

日野:そうですね。メディアがないのがつらいという話が一番最初に出て、まさに『Qualities』は地域の産業で面白いことやっている人たちがいるのに、それを出すところがないというのがあって始まったので。特に焼酎は九州という1つの島の地酒なわけですよ。とても僕もポテンシャルあると思っているので、神吉さんと一緒に結託して、焼酎特集を今後続けていこうと思っています。

「千本桜」を買ったのは、本の中で紹介されている、柳田さんのページの最後に娘さんが出てくるんでけど。いろんなことを試している中で、娘さんは10歳でお酒は飲めないんだけど、とてもいい香りだと娘さんが言ったと。それを美味しいお酒にして最終的に娘さんがそこを継ぐと。娘さん、さくらこちゃんと読むんですっけね? で、焼酎の名前が「千本桜」なんですよ。こんなにいい話があるかと思って。僕はこれ読んで泣いちゃったんです。

ストーリーを知っている人が多くなれば、味が変わるというか。酒好きの人にどんな酒がうまいのかと聞いたら、「造り手の人と一緒に飲む酒が一番うまい」と言われたことがあって。もちろん本当に一緒に飲めたら一番いいと思うんですけども、造り手の方々が考えていることを思いながら飲む酒がうまいという意味だとも思うので。九州の人たちみんなが自分たちの地酒だと思って、発信をしたくなるような情報の渡し方をみんなで工夫したりとか、今まで出してない話を出したりとかもあるのかなと思ったりしました。

柳田:いろんな蔵がそれぞれいろんな事を変えながら前に進んでいるので、ちょっとしたことでもそれが雨だれ石を穿つようにですね、どんどん浸透していって、それがまた渦になり、ムーブメントになると思いますので。もっと期が熟すのを待つという、ちょっと受け身的な発想ですけれども、それでも打ち続けることが次の焼酎がくる残された1つの方法かなと思っています。

芋を熟成させた「千本桜」のフルーティな香り

神吉:柳田さんはエンジニアでもあるんですけど、いろんな実験を積み重ねて新しい商品を作られて。「千本桜」もどんなに大変だったか、何を繰り返してできたのかを説明してもらっていいですか。

柳田:私の蔵は42年前に一旦芋焼酎をやめて、そこから35年間麦一本でやってて、その間に芋焼酎を作る設備が一切なくなってたんですね。うちにあったのは、穀物を蒸すドラムだけだったんですよ。復活させる時は、芋蒸し機もない、芋洗い機もないです。このドラムでですね、米を蒸した後に無理やりそこに芋を投げ込んで蒸して、それを掻きだして仕込むという、産みの苦しみはありました。

神吉:芋の掘りたてを新鮮な時に仕込むっていう考え方から、熟成させて仕込むという、まあいろんなところの蔵が挑戦を始めてますけど、柳田さんは柳田さんなりの試行錯誤で作られたんですよね。

柳田:そうですね。お芋の香りを出す時に、うちは麦焼酎を造る時に減圧も常圧もできるタイプの蒸留器のカスタマイズをしたので、減圧で作ってみたりしてたんですけども、あんまり芋焼酎らしさが出なかったんですね。そういった時に、いろいろな仲間の蔵元が、お芋を果物みたいに、熟成させて、非常に複雑な香りを出したお芋を使って仕込むと、今までなかったようなとてもフルーティーでかなりアロマティックな焼酎ができたと言っていて。自分でやらないで語るのが嫌いなものですから、やってみたところ魅力的な香りが。先ほど日野さんがおっしゃっていた通り、娘がそれを興味を持ったので、私の生涯のテーマが「いかに娘に嫌われずに継ぎたいと言わせるか」なので、もうこれだと思ってハマコマチ(※芋の種類)にチャレンジしています。

神吉:日野さんどうですか? 香りをかいでみて

日野:まだ開けてないんですよ、こっち(千本桜)は。

神吉:香りがかなり華やかなタイプの焼酎を作ってらっしゃいますよね。

日野:本当だ! あ、これはやばい、華やかですね。本の中では「果物と花の強烈なフレーバーは熟成させたオレンジ芋から生まれた」と書いてあるんですよね。

黒木:今感じた香りの中に、華やかだったり紅茶の茶葉のような香りを感じたら、それはオレンジ芋由来で香るんです。ベータカロチンから生まれてくる香り成分が出てきています。

たった0.2%の違いで個性が香る

若松:芋と米だけなのに、こんなに豊かなアロマが生まれてフレーバーが生まれているのが実は焼酎の面白さなんですよ。

神吉:私も焼酎のこの本で取材した時に、香味成分って焼酎の0.2%なんですよ。0.2%でこんなに個性が出てくる。逆に、わあこれ好きって思うという事は、その0.2%感じてるんですよね。それが面白いところですね。

若松:だから日野さん、「『黒霧島』でいいじゃん、何が違うんですか」という質問には、「何も変わらないですよ。一緒ですよ。“わからない方には”」って言えばいいんです。

黒木:徹幹さんはそれが言えますけど、実際いろんな蔵とお付き合いして話してると、ただただ大手のミニチュアを作っている蔵も数多くあります。だから、僕らはどう違うのかを神吉さんがおっしゃってるように、より表に出さないといけない時代に来てるなと。

若松:コーヒーみたいに、缶コーヒーもインスタントコーヒーも否定しないし、だけどもスペシャリティコーヒーみたいなのも世界のみんなに知られてきて。日本酒とかワインとか他のお酒ブームの前に比べて飲み手側も興味を持って違いが分かる人たちが増えてきたので、そういった他のところでセンスを磨いた人たちが焼酎を改めて飲んだら、「全然変わってきたね」とか違いが分かるところにもしかしたら。造り手の流れと飲み手の流れが合致するところが、すぐそこに来てるような気がします。

 

「㐂六」の無濾過の製法

日野:あと、徹幹さんに言われたんで、悔しいので1個だけ言うと(笑)。「霧島」とか「白波」で十分美味しいよと思ってますし、言ってもきたんですけど、1個だけ自主的にこれは特に美味しいと気付いた焼酎があって、それが「㐂六」なんですよ。これは見かけたら買ってました。

黒木:「無濾過」もぜひ。普通の「㐂六」とは格段に違うので。

神吉:それはどこが違うのか、せっかくだから説明を。

黒木:「無濾過」は全て自社の農園の無農薬のエリアで栽培していて。別に僕無農薬信者とかじゃないんですけども、明らかに違いが出てるんで、飲んで比べていただきたいんです。「無濾過」という名前で誤解されるかもしれないけど、実は芋が全然違うんですよ。同じコガネセンガン(※芋の種類)でも栽培方法でここまで焼酎で味が違う

神吉:「㐂六」を単に濾過しないというわけではない?

黒木:そうです。

日野:濾過をしないというのは、皆さんは何か理由があって濾過しなきゃいけないということですか? 何が価値になるんですか?

黒木:うちの自社農園の芋は農薬とか、薬を使ってないので土壌菌が多いんです。土の中にいる軟腐菌という菌に芋が触れると、ちょっと見た目悪くなるんですけど、香りが増すんですよ。もとの物質を芋が持ってるから増えるんですけど、変化されるんです。まあある意味発酵ともいえると思うんですけども。そのおかげでこの芋は野生の環境の中でより強い香りを放っているので、それをストレートに表現したくて濾過もせずに「㐂六」にしています。

中村:濾過は灰汁とりみたいな意味ですね。油が出てきて、それを取らないと悪い香りになるよってことを僕たち体感で分かっているので、濾過をするのは決して100あるものを80に減らしてるのではなくて、形を整えてるんですけど。「㐂六の無濾過」は僕たち同業者が見ても嫌な香りが全くしないという。なんであーなるのみたいな。

黒木:ありがとうございます。

日野:家に「なかむら」と「㐂六の無濾過」と「大和桜」の一升瓶あるんで、楽しみです。

(後編に続きます)

日野昌暢
1975年福岡県福岡市生まれ。2000年 九州芸術工科大学 芸術工学府 生活環境専攻修了。同年4月に博報堂入社。14年間の営業職を経て2014年よりケトルに加入。

「預かったご予算を着実な効果にしてお戻しする」という強い想いとともに、何が社会を良くするのか?を考えるデザイン発想で、事業企画や商品開発から、PR、プロモーション、マスメディアでの広告などまで、幅広い経験を活かした統合プロデュースを手がける。

また「本質的な地域活性」をマイテーマに、“外から目線”で地域資産を再編集し、地域のプレイヤーの“関わりしろ”を作りながら、事業、プロジェクト、プロダクトを共創し、開発して、情報発信を行っていくことを得意とする通称”ローカルおじさん”。

2020年には九州を取材テリトリーにしたローカル発Webメディア Qualities(クオリティーズ)を企画プロデュースし、創刊編集長。観光庁や文化庁の採択事業者へのコーチングなども多数行っている。

主な受賞歴に、2度のACC TOKYO CREATIVE AWARD グランプリ(2018,2022)、グッドデザイン賞BEST100(2022)、Spikes Asia ゴールド(2019)、カンヌライオンズ ブロンズ(2013,2019)、ADFEST ゴールド(2019)など。
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