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連載 : Kettleのお仕事

2021/09/28

最終回直前! 話題の深夜ドラマ『お耳に合いましたら。』キャスト&制作陣スペシャル対談

ケトルキッチン編集部

チェーン店グルメ“チェンメシ”と、ポッドキャスト番組を掛け合わせたドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)。伊藤万理華さんが演じる主人公・高村美園が、大好きなチェンメシについてポッドキャストで語り、パーソナリティとして成長していく姿が話題になりました。9月30日(木)に放送される最終回を前に、『お耳に合いましたら。』で主演を務める伊藤さん、監督・脚本の松本壮史さん、原案・企画・プロデュースを務める畑中翔太さんに制作・撮影秘話を語っていただきました。

第1話を見て、逃亡を計ろうと思った

畑中翔太(以下、畑中):まずは2カ月におよぶ撮影、お疲れさまでした。クランクアップした今、改めて撮影を振り返ってみていかがですか?

伊藤万理華(以下、伊藤):地上波連続ドラマ初主演ですし、こんなに長い間役柄と向き合うのは初めてでした。ポッドキャストでしゃべりながらチェンメシを食べるという、声で表現することの難しさや手数の多さに何度も直面しましたが、話数を重ねるにつれて自分自身が美園と近しい存在なんだということを改めて実感しました。

畑中:どんなところが伊藤さん自身と近いと感じましたか?

伊藤:好きなことを大切にして、それをちゃんと言葉で伝えたいという、思いの部分です。そんな美園を演じることで、私自身も一緒に成長していけたように感じています。

松本壮史(以下、松本):最初のころ、不安がってましたもんね。

伊藤:そうですね。あまりのプレッシャーで、放送前の第1話を見せてもらっても「逃げたい」と思ってました(笑)。パニック状態だったので、いいのか悪いのかもわからなくて。だからドラマの撮影中でしたが、どうにかしてフェードアウトできないかって考えていました。

松本:え、逃亡……!? 全然知らなかった。映画『サマーフィルムにのって』でもご一緒していたので、なんとなく伊藤さんの人柄はわかっていたつもりだったけど、こんなにヤバい人だったとは(笑)。たしかに第1話を見てもらった時、浮かない表情でしたね。

伊藤:美園と同じように、私も初めて尽くしの毎日で本当に余裕がなかったんです。もう不安で不安で……。とはいえ、浮かない顔をして、すみませんでした!!!

松本・畑中:(笑)。

畑中:先週で11話まで放送された『お耳に合いましたら。』ですが、周りの反響はどうですか?

松本:伊藤さんはエゴサしないんでしたよね?

伊藤:しないです。でも友人や家族から、「友達に『お耳知ってる?』って聞かれたよ」と言われて。自分の近しい人たちが、『お耳に合いましたら。』を“お耳”って呼んでくれてることが嬉しかったです。あとは「エンディングのダンスが万理華っぽくてよかった」とか。

松本:僕自身もエゴサはあまりしないようにしてて、それでも入ってくるお耳への感想はポジティブなものが多くてホッとしましたね。

畑中:ありがたいことに、SNSでも大きな反響をもらっていますよね。伊藤さんは同時期に舞台をやっていたし、毎日ドラマの撮影でめちゃくちゃ忙しかったと思いますが、一番しんどかった時期ってどのあたりですか?

伊藤:放送がすでに始まっていた撮影中盤くらいがピークでした。もはや記憶にないくらいの忙しさでした。そんな中、3日連続でポッドキャストのシーンを撮影したんですが、こんなにつまずくのは初めてというくらいの壁にぶち当たってしまって……。でもスタッフさんたちのサポートのおかげでどうにか乗り切れました。

松本:ポッドキャストのシーンは一人芝居でセリフ量も膨大でしたもんね。僕が現場で印象的だったのは、第6話のジョナサンの回。ただでさえセリフ量がハンパない回だったのに、待ち時間に伊藤さんの横を通ったら、翌々日の分のセリフをぶつぶつ練習していてちょっと引きました。もちろんいい意味で。そういう努力が主演には必要なんだなって感動しちゃいましたね。

伊藤:どのタイミングで次のセリフを頭に入れるべきか。その日のシーンを撮影しながら計算していかないといけないんだと学びました。とても成長できて、貴重な経験です。

当初はラブストーリーだった!? 『お耳に合いましたら。』制作裏話

松本:僕がこのドラマのお話をいただいたのは3月末だったかな。どうして僕を呼んでくれたんですか?

畑中:企画が決まってから、テレビ東京のスタッフ陣と会議室にこもって監督の相談をしたんですが、その中で挙がったのが松本さんの名前でした。当初は僕、松本さんについて詳しく存じ上げなかったんですが、テレビ東京の方が「松本さんは人格者だ」って言っていて(笑)。短期間で12話をみっちりと制作するとなると、センスや技術だけじゃなくて、その人柄も大事にしたいなと思ったんです。

松本:人格者だなんて……ちょっと嬉しいです(笑)。脚本会議は週2でしたよね。今思うと、とても楽しかったなって。

畑中:そうですね。最初は恋愛ドラマにしようかと話していて。

伊藤:え!!! 今考えると、絶対にないですね(笑)。

畑中:佐々木(鈴木仁)と桐石(中島歩)、美園の三角関係の図を描いたり、そこに元彼を復活させて四角関係にしてみたり。だけどスタッフで話し合ううちに、「そんなドラマ、誰も見たくないね」ってなって(笑)。それで恋愛軸を取っ払ったドラマにすることになりました。

松本:僕が参加した時には、すでに畑中さんが考えた12話分のプロットがありました。その中で第9話は「味変回」ということが明確に決まっていた。それを見て、畑中さんをはじめとした制作チームは「間違いなく、おもしろい人たちだ」って信用できたんです。

畑中:お互いに探り探りで……。脚本の打ち合わせも毎回4、5時間やっていましたよね。

松本:あれは長かった(笑)。毎回気持ちよく終わらせようと思うのに、つい熱くなっちゃうんですよね。それで帰り道に、「あんな傷つく言葉言っちゃった」「もっと相手の気持ち考えなきゃダメだ」って反省するのがルーティンで。

畑中:そんなふうに思っていたんですか(笑)。でも松本さん、全然怒ったりしないんです。納得いかないことをはっきとり言うのが素晴らしいなって。勇気のいる行動ですし。

松本:いえいえいえ。最終的にはみんなでなんとか知恵を出し合って、一つずつ課題を解決していきましたよね。本当にいいチームで、参加できてよかったと思っています。

お耳チームが一丸となって目指したのは、大人の文化祭

畑中:ここでお二人に、お耳の「ここが好き!」というポイントをお伺いしたいのですが。

松本:撮影現場の雰囲気ですかね。風通しがいいというか、僕はそこが好きでした。男女比も半々に近くて、「俺たちの世界」みたいな強引な感じにならなかったのが、僕にはとても良かったですね。そのやわらかい雰囲気が作品にも現れているような気がします。

伊藤:私もそう! 松本さん以外はじめましての人ばかりの現場だったんですけど、オープニングに使っているジオラマや、美園の部屋などのセットを見て、制作チームの空気感が「自分と一緒だ」って。今までは、スタッフさんたちとコミュニティケーションを取ることができずに終わる現場が多かったんですが、今回は積極的にコミュニケーションを取れました。それもお耳チームのみなさんがいい雰囲気を作ってくださったおかげです。自分も制作チームの一員として作品に関わることができたことが、ものすごく嬉しかったです。

松本:初期のころからスタッフの名前を積極的に覚えようとしてましたもんね。

伊藤:とにかくみなさんのいる撮影現場が楽しくって。特に思い出深いのが、最終回のとあるシーン。そのシーンを撮るために一丸となって協力して撮影して、そのグルーブ感には、乃木坂46を脱退して、自分が一番やりたかったことはこれだなって込み上げるものがありました。それが嬉しくて嬉しくて、撮影が終わったら「集合写真を撮りましょう!」って声をあげていました(笑)。

松本:文化祭みたいな空気感がありましたね。

畑中:僕はこの作品って、大人が本気でやっている文化祭だと思っていて。大きな予算があるわけではない中で、スタッフみんなで、小さな美術や演出1つ1つにまでどうやったら良くなるか? 面白くなるか? を考えていた。仕事というより、大人による全力の文化祭の延長線上にこのドラマができたような感覚です。

伊藤:本当にそう。手作り感と一体感がすごかったです。畑中さんの好きなところは?

畑中:悪い人がいないし、誰も死なないし、誰も人を咎めたりしない。そういう幸せな世界線かな。このドラマに出てくる人と友達になりたい、あの会社に勤めたいって思うんですよね。

伊藤:めちゃくちゃ共感です。そんな幸せな世界線の一方で、美園が一人で思い悩むところはリアルなんです。フラれて泣いたり、親友と再会して戸惑ったり、親との関係に悩んだり。登場人物にいい人が多いことと、そうしたリアルな描写のバランスがいいなって。

畑中:「誰もの記憶にある共通体験」が根底にあるので、心理描写はあえてわかりやすくしていないんですよね。たとえば、第4話で美園が彼氏にフラれて言い放ったのは、「好きの気持ちの違いがわからない」という結論でしたが、現実って、そういう白黒つかないものだよなって。

伊藤:あのシーン、私も好きです。スタッフさんも現場で泣いていて……。プレッシャーに押しつぶされそうな時期だったから、見ている人には刺さるんだって救いになりました。

松本:伊藤さんの演技でグッとくる人はたくさんいます。初回を撮り終えた時点でスタッフ一同、「このドラマは絶対に大丈夫」って確信しましたから。

畑中:僕もこれはいけるって思いました。エンディングのダンスシーンも最高だったし。あ、エンディングでダンスを取り入れることを提案したのって、松本さんでしたよね。

松本:そうです。4月期に放送されていたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』に感銘を受けまして。毎回違うエンディングが楽しみで、これ、いいなって思ったんです。僕は「毎回違うチェーン店で踊る」とだけ考えてたんですが、振付師の菅尾なぎささんが、「毎回振り付けも変えましょう」と言ってくれて、更に話数を重ねるごとにダンスする人物も増やしていくことになっていきました。

伊藤:みんなで踊れて、最高に楽しかったです。

松本:笑いながら踊ってましたもんね。

撮影中からお耳ロス? 最終回はご褒美がたっぷりの展開に

畑中:そんなお耳チームも間もなく一旦解散となりますね。

伊藤:私は撮影の中盤から終わるのが寂しくて、自前のフィルムカメラを持ち込んで思い出作りに励んでいました。誰よりも早くお耳ロスになっちゃって(笑)。

畑中:キャスト同士、本当に仲良くなっていましたよね。ドラマの中のお耳チームのように、制作過程も大人になっての“ひとときの青春”という感じで、僕もすごく名残惜しいですが、最後に視聴者の方にメッセージをお願いできますか?

松本:僕、最終回オタクで、ずっと見てきた人に対するご褒美があるドラマが好きなんですよ。今回は制作側なので、それを感じてもらえるものになっていると思います。スタッフが見ても、視聴者の方が見ても、グッとくる展開になっています。ぜひお楽しみください。

伊藤:最初はプレッシャーでガチガチだったのに、回を重ねるごとに美園と自分が重なって、美園を演じるのを終えたくないとすら思いました。そんな作品に出会えたことがとても幸せです。お耳の最終回をご覧になった方に、何かに挑戦することがこんなに尊いことだということが、少しでも伝わるといいなぁ。新しいことにチャレンジすることは簡単じゃないけど、やってみようと思える人がいてくれたら嬉しいです。

【番組情報】
木ドラ24「お耳に合いましたら。」
毎週木曜 深夜0時30分〜1時放送、テレビ東京系列にて放送
(最終回は9月30日(木)深夜0時30分から放送)
出演:伊藤万理華 井桁弘恵 鈴木仁 ほか
監督:松本壮史 杉山弘樹 松浦健志
脚本:家城啓之 大歳倫弘 灯敦生 松本壮史
原案・企画・プロデュース:畑中翔太
https://www.tv-tokyo.co.jp/omimi/

 

■スタッフクレジット
撮影/米山典子
取材・文/船橋麻貴

ケトルキッチン編集部
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