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連載 : Kettleのお仕事

2022/03/28

Kettleのお仕事特別企画 鳥羽周作シェフ×ミニストップ 松本健さん×皆川壮一郎 鼎談! 「コンビニ弁当の新時代! 逆転の発想から誕生した“タレ弁”とは?」

ケトルキッチン編集部

(写真:左から松本健さん、皆川壮一郎、鳥羽周作さん)

 

ミシュランガイド東京2020から3年連続一つ星獲得の「sio」を率いる鳥羽周作さんと博報堂ケトルがタッグを組んだ“食のクリエイティブカンパニー”「シズる株式会社」。3月22日(火)に同社が大手コンビニチェーン「ミニストップ」とともに開発した新お弁当シリーズ「タレ弁」の第一弾が全国デビューしました。
メニュー開発においては“あと回し”にされることも多い「タレ」を主役にした「タレセントリック」なお弁当作りには、並々ならぬチームの情熱と、鳥羽シェフの“ミニストップ愛”がつまっているようで……! 発売を記念し鳥羽さん、ミニストップ弁当開発担当の松本健さん、博報堂ケトルのクリエイティブディレクター 皆川壮一郎による鼎談をお届けします。

 

鳥羽シェフの“ミニストップ愛”が爆発

ーーこのプロジェクトがスタートした経緯を教えていただけますか?

皆川壮一郎(以下、皆川):僕が世界で一番好きなレストランは、鳥羽君がオーナーシェフを務めるミシュラン一つ星の「sio」なんです。彼の料理とクリエイティブを掛け合わせたら新しいアイディアが生まれるのではと、昨年春にともに「シズる」を立ち上げたのですが、設立当初から鳥羽君は「コンビニのお弁当を作りたい!」と熱望していたよね?

鳥羽周作さん(以下、鳥羽):うん、してたね! 僕、コンビニが大好きで、料理人としてもコンビニをリスペクトしているんです。レストランで出しても遜色ないようなクオリティの商品も意外と多いし、何より多くの人に愛される時流を捉えたメニューをあのスピード感と量で世の中に流通させられるのは本当にすごいことで。言うなればコンビニのマーケティング力が集約されたプロダクトが、お弁当なんです! お客さんのニーズを研究するため、毎日1、2軒はコンビニに通っています。

松本健さん(以下、松本):鳥羽さんは学生時代にミニストップでアルバイトをされていたんですよね?

鳥羽:はい、自宅の近所にもいくつかコンビニはありましたけど、わざわざ自転車で20分の場所にある「ミニストップ」を選んで働いてました。当時からミニストップさんと言えばソフトクリーム。こんなに美味しいソフトクリームをコンビニで食べられるのかと衝撃で、バイトの休憩中に食べすぎて怒られたこともあったくらい(笑)。

松本:さすがのミニストップ愛です!

皆川:だからミニストップさんとのファーストコンタクトは、我々「シズる」側からの自主提案でした。「一緒にコンビニ弁当を作りましょう」と扉を叩いたんです。

鳥羽:コンビニ弁当は「幸せの母数を増やす」という「シズる」のモットーとも合致すると確信していました。ミシュランシェフがレストランのお客さんだけを幸せにするのも素晴らしいことだけど、もっと多くの人にミシュランシェフの料理を食べていただくことで、幸せの総量が増えるんじゃないかって。

 

 

ーー大手コンビニチェーンは各社ありますが、真っ先にミニストップさんに提案を?

鳥羽:もちろんです。ミニストップさんは業界第4位。店舗数やお弁当のラインアップにおいては他店が優勢という現状があるなかで、我々がジョインする意味を真剣に考えました。僕は天の邪鬼だから、あるジャンルで一点突破できたら逆にインパクトが大きいのでは? とむしろ心が燃えた。お弁当が成功したら、いずれソフトクリームやアイスも手がけられたら、という下心も正直あります(笑)。

松本:頼もしいです(笑)!

 

 

「うまいタレがあれば何杯でもご飯を食べられる」原体験から生まれた「タレ弁」

ーー「タレ弁」のアイディアは、どうやって生まれたのでしょう?

皆川:最初の案は「タレ弁」ではなかったんです。「誰もまだやっていない」かつ、「低価格というコスト問題をクリアできる」お弁当のアイディアを熟考した末に、「タレ弁」に辿りついた感じです。ここで大きなヒントになったのが、鳥羽くんの貧乏だった学生時代のエピソードでした。

鳥羽:それこそミニストップさんでアルバイトをしていた頃、焼き肉のタレを買って白米にかけたら、めちゃくちゃ美味しかったことを思い出したんです。「僕だったらうまいタレがあれば何杯でも白米を食べられちゃうな……」とつぶやいたら、「それ絶対に美味しいやつじゃん!」とみんなが食いついた(笑)。

皆川:そうそう! ミニストップさんは白米を店内で炊いていて美味しいことでも有名だから、コレだと思いました。「まずはタレのクオリティにとことんこだわり、残りの原価をメインの食材にあてる」「原価をかけられないお弁当の勝敗は味付けがにぎっている」。そんな“逆転の発想”を、松本さんたちにプレゼンすることに決まりました。

松本:「タレ」についてはいつもメニュー開発の終盤に考えていたものですから鳥羽さんたちの案はとても斬新で。かつロジックもしっかりしていたのでスムーズに腹落ちしたのを覚えています。ちょうど白米もリニューアルタイミングでした。

 

 

 

タレが主役の「タレセントリック」なお弁当とは?

 

ーー3月22日(火)発売のシリーズ第1弾は、「豚生姜焼き弁当」と「チャーシュー弁当」、続く第2弾のお披露目も控えているそうですね。メニュー開発のこだわりを教えてもらえますか?

鳥羽:「タレ」の魅力を最大化するには? という発想ありきで、肉の薄さやご飯の炊き方を考えていきました。具体的には「生姜焼きは肉を薄くした方がよりタレを美味しく感じるのでは?」「チャーシューは分厚いより、箸で切れるほど柔らかい方がタレと相性がいいのでは?」といった感じで。

皆川:これが、我々が呼ぶところの「タレセントリック」なお弁当作りですね。

松本:ミニストップでは従来「厚切り牛カルビ」しかり、「厚切りローストンカツ」しかり、「厚切り」というキャッチーコピーでお客様にアピールするのが定石でした。でも鳥羽さんや皆川さんは、そんな常識を覆してきた。更にこれまでと決定的に違うのは、別添えの「後がけダレ付き」という点。すでにタレがたっぷりかかった生姜の上から、さらに“追いダレ”ができる仕組みです。口の中をタレでいっぱいに満たす贅沢をご堪能いただけます。

鳥羽:決して繊細な食べ方ではないけど、絶対みんな、コレが好きなはず!「最高に上品に“下品”を作る」というのが僕のなかの隠れテーマだったりしました(笑)。

 

ーー「タレ」自体にもこだわりが?

鳥羽:美味しい「タレ」の法則をすべて詰め込んでいます。結果……、一言でいうと、まぁ、最高ですよ!

松本:実は今回の「豚生姜焼き弁当」の「タレ」でもっとも多く使われている食材は、リンゴなんです。これも今回のこだわりですね。

鳥羽:「タレ」がしょっぱくなりすぎないためには甘さが必要。というわけでナチュラルな甘さのリンゴを採用したのです。酸味も含んでいるため甘ったるくなりすぎず、白米が驚くほどススミます!

皆川:鳥羽君なんて、「後付けダレ」を最初からご飯にかけて食べちゃうもんね! 最高に下品で美味しい食べ方(笑)。

松本:ただ鳥羽さんのお弁当づくりはとても繊細でした。「豚生姜焼き弁当」のシャキシャキ分厚いタマネギや、「チャーシュー弁当」で最も修正を重ねた付け合せのタケノコなど、細部までこだわってくれました。

鳥羽:「お弁当という世界に、どうでもいいものは一つもない」というのが僕のポリシーなんです。付け合わせだってめちゃくちゃ重要なポジションですよ。ここに「どうでもいい感」が漂ってしまうと、お客様は一気に冷めてしまいます。たかが570円、されど570円。安さ競争という制限があっても、絶対細部まで美味しくできる。これは心意気の問題なんです。 
 

 

 

最高のチーム力で「クリエイティブ×食」の仕事ができた理由

ーー今回初タッグを組んだ「ミニストップ」と「シズる」ですが、チームとしての産みの苦しみはありましたか?

皆川:初めてミニストップさんとお会いしたときは、会議室が硬い雰囲気でしたよね。初回は鳥羽君が「タレ弁」を作って、それを試食するミニストップのみなさんは「お手並み拝見」という感じで、少しピリッとされていました(笑)。

松本:そうだったと思います(笑)。私たちもまだ鳥羽さんの人となりがわからなかったので緊張していたのかもしれません。

鳥羽:そこでも「僕ほどミニストップさんへの想いが強くて、深くフルコミットできるシェフは日本にいない!」と断言させてもらいました(笑)。

皆川:「フルコミット」ってワードを連発してたよね!

松本:通常は我々側から「こういうメニューはいかがでしょう?」と監修のシェフやレストランにご提案するんですけど、今回は鳥羽さんが考案された「レシピ」や「タレ」を我々が試食品として再現し修正を重ねていく新しい方法にチャレンジしたんです。鳥羽さんは結構ズバッと意見してくれるので、修正しやくすとてもスピーディーでした。

鳥羽:僕はどの仕事においても、「皿の上の美味しさは絶対に忖度しない」って決めているんですよ。

松本:試食会でも、試作品が美味しくないときは、しばらくその場に静寂が流れましたよね。

鳥羽:なにがダメなのか、伝え方を含めて真剣に悩んじゃうんですよね……。「美味しくない」と一言で突っぱねるのはとても簡単なこと。「じゃあ、これをどうしたらもっと美味しくなるか」具体的に修正案を伝えるのが、現場のみなさんへのリスペクトだと思うし、愛なわけです。ものづくりの大変さを僕自身、料理人として痛いほど分かっていますから。

皆川:普段の僕が携わっている広告・クリエイティブの仕事においても、それを実行できるディレクターって意外と少なくて。やっぱりディレクションする人は鳥羽君のように「リスペクトと愛」があってほしいという理想が大前提としてあります。

鳥羽:このプロジェクトでは別に僕が偉いわけではなくて。チームのメンバーみんながフラットな立ち位置でディスカッションし、熱量をずっと維持できたことが誇らしい。いいチームで「クリエイティブ×食」の「シズる」らしい仕事ができたなとしみじみ思います。

皆川:チームでモノをつくるって難しくて。もちろん迎合はダメだし、ギスギスは最悪なんです。でも「タレ弁」チームに流れるグッドバイブスは、絶対にプロダクトへ反映されていると自負しています。

 

(※コロナ対策には十分配慮して撮影を行っております。)

 

ーー「タレ弁」という言葉自体も、話題になりそうな予感がします。

鳥羽:そうだといいな。僕、「タレ弁」という言葉自体が本能的でめちゃくちゃ“シズる”なと感じているんですよ。

皆川:鳥羽君はレシピよりも前に、耳で聞いて「これは美味しそうだぞ!」と人々を興奮させるネーミングやワードを発想できるところも感心します。

鳥羽:ありがとう。壮ちゃん(皆川)のような広告やPRのプロと仕事をすると、そうした施策込みでメニュー名も考えるから学びが多いよ。今回は「広告」と「食」のチームの相性のよさを体現した「シズる」らしい最強コンテンツを、世に出すことができたんじゃないかな。

皆川:ここまでぴったりと鳥羽君に張り付いて仕事ぶりを見ていた者としては、世の中のみなさんが「タレ弁」にどんな反応を示すのかがとても楽しみです!

松本:「タレ」から入る逆転の発想と、そこに貫かれた理路整然としたロジック。「タレ」に惹かれる人間の本能に訴えかけられる商品を、みなさんと作り出せたことは私たちにとっても非常に大きな自信となりました。「タレ弁」のようなキャッチーな名前で商品を発売するのも初めてなので大変ワクワクしています。

鳥羽:絶対売れるもん。これで売れなかったら僕、坊主にしますよ(笑)。

 

 

 


「タレ弁」については、下記にてご確認ください。
https://www.ministop.co.jp/syohin/tareben/

 

 

<プロフィール>
■鳥羽周作さん
Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31歳で料理人へと転身。都内の名店で修行を積み、2016年3月より代々木上原「Gris」のシェフに就任。その後、同店のオーナーシェフとなり、2018年7月より「sio」としてリニューアルオープン。ミシュランガイド東京で3年連続1つ星獲得。業態の異なる 6 つの飲食店 (「 sio 」「 o/sio 」「 パーラー大箸 」「 ザ・ニューワールド 」「 㐂つね 」「 Hotel’s 」)を運営。TV、書籍、YouTube、SNSなどでレシピを公開し、レストランの枠を超えて「おいしい」を届けている。
https://sizuru.co.jp/

■松本健さん
2000年ミニストップ株式会社入社、営業本部を経て2017年商品本部へ異動。軽食惣菜、調理麺の商品開発に始まり、現在弁当の商品開発を担当し、「あこがれのヒレカツ弁当」「チャーシュー弁当」「ずっしり極!シリーズ」「駅弁風弁当シリーズ」など、数々のヒット商品を担当。

■皆川壮一郎
クリエイティブディレクター
1978年生まれ。営業職、マーケ職などを経て、現職。趣味と実益を兼ね、夜な夜なスマホ片手にSNS界隈をパトロールし、実際にそこから企画のヒントを得ることも。主な受賞歴は、JAAAクリエイターオブザイヤー メダリストなど。

 

スタッフクレジット
Text:城リユア(mogShore)/Photo:岡本卓大

 

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