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連載 : ケトル的【宅活】のススメ

2020/04/22

ケトル的【宅活】のススメ(vol.4 音楽)

ケトルキッチン編集部

新型コロナウイルスの影響で、#おうち時間 の充実が急がれる昨今。

こんなときこそ、今まで観たかった・読みたかった・聴きたかった

あの作品たちを、思う存分消化する時間にしませんか?

ってことで、これから定期的に博報堂ケトルの「宅活の達人」たちが、

映画や本、漫画、音楽など、それぞれのオススメのコンテンツを紹介していきます。

それではみなさん、お身体にだけは気をつけて、充実した宅活を!

第四回目のテーマは「音楽」

今回は音楽好きケトラーが、この時期に聴きたい音楽をセレクトしました。オススメのアルバムを購入するもよし、気に入った楽曲だけをDLするもよし。それぞれの楽しみ方で、素敵な音楽をお供に、おうち時間をお過ごしください。

「BEATstrumentals」  選者/木村健太郎

2年ほど前まで、毎年夏に、北海道のニセコに数日間行っていました。両親が夏の間だけ、病弱な母親の避暑のためにオフシーズンのリゾートマンションを借りて住んでいたからです。本来そこにいるはずのスキー客がいないメインストリートはひっそり静かで、寂しくもゆったりとした時間が流れていました。

今の東京は、オフシーズンの観光地のようです。

リモートワークで身体がなまってしまい、あてもなくジョギングやウォーキングに出かける。開いているはずのお店が閉まっていて、いるはずの人がいない商店街を歩く。共産主義時代の東ヨーロッパの街を旅しているかのような、不思議な気分になる。

そんな時のBGMとして「BEATstrumentals」が結構いいです。チルアウト系のインストルメンタルを集めたApple Musicのプレイリスト。これを聞きながら街を歩くと、今のオフシーズンの東京が、センチメンタルなドキュメンタリー映像になります。ぜひやってみてください。

実はこのBEATstrumentals、リモートワークのBGMとしてもおすすめです。アンビエントなので仕事を邪魔しないし、バロック音楽のような集中効果もあります。しかもほぼ無限に長いので一日中流しっぱにできて(250=9時間)、曲も随時更新されます。薄く流して、ヘッドセットを使えばオンライン会議の相手にも聞こえません。

Stay Homeのお供に是非。

BEATstrumentals

『ブレイム・イット・オン・ザ・ボサノヴァ』 選者/中川紀彦

外出自粛の続く中、みなさまどのようにお過ごしでしょうか。

今回は、そんなモヤモヤした中に最適なアルバム、イーディ・ゴーメ『ブレイム・イット・オン・ザ・ボサノヴァ』(邦題『恋はボサノヴァ』)をご紹介します。

このアルバムは、歌手のイーディ・ゴーメが、当時アメリカでヒットしていたボサノヴァ曲のほかミュージカル曲、ポップス曲を、ボサノヴァアレンジで歌った、いわば「流行歌集」。

発表された1963年以降、そんな「流行歌集」は死ぬほど売られていたはずですが、なぜこの一枚がここまで魅力的なのか。その答えは、イーディ・ゴーメのクセのない歌声、ツボをおさえた幅広い選曲、(劇伴っぽい)洒脱なボサノヴァアレンジ、そしてこれらの絶妙なバランスによって成り立つ「軽やかさ」にあると考えています。

試しに、アストラッド・ジルベルトが歌うボサノヴァや、イーディ・ゴーメの別アルバム、オリジナル曲のいくつか……例えばフランスのコメディアンで歌手のアンリ・サルヴァドールの「メロディ・ダムール」や、超有名作曲家ヘンリー・マンシーニの「ムーン・リヴァー」(オードリー・ヘップバーンが映画『ティファニーで朝食を』中に窓辺で歌うアレ)を聴いてみても、残念ながら、このアルバム特有の「軽やかさ」は感じられません。それほどまでに、この一枚の持つ「軽やかさ」は稀有で美しい。

どこまで狙ったのか分からないものの、このメンツを集めてアルバムを作り上げたプロデューサー、アル・カシャの慧眼というほかありません。

このアルバムを繰り返し聴くのもいいですが、もしもこれが少しでも気に入ったら、どこが自分の琴線に触れたのか確かめるためにも、いろんな方面から「掘ってみる」(他アルバムを聴く)ことをおすすめします。

イーディ・ゴーメ軸で掘るか、ボサノヴァ軸で掘るか、ミュージカル軸で掘るか、ディック・ハイマン(後にムーグ・シンセサイザーを弾きまくるイカれたアルバムを発表)など参加ミュージシャン軸で掘るか、アレンジャーのニック・ペリート(もしくはビリー・メイ)から掘るか、はたまた「恋はメレンゲ」というタイトルで、珍カヴァーした(?)大滝詠一軸で掘るか……。

幸い、聴き比べる時間はたっぷりあるはず。ぜひお楽しみください。

 

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『THE GOLDEN RING~佐野元春ウィズ・ザ・ハートランド・ライヴ1983-1994』  選者/北野篤

この先行きわからない状況の中で、自然と聴く音楽の傾向も変わってきた気がします。とにかくこの沈んでいるテンションをガツン!とあげてくれるものを、熱くたぎるようなものを欲しているな、と。

というわけで若かりし頃の佐野元春のライブセレクション盤を推薦します。

佐野元春といえばテレビに出た時のとぼけた感じとか、近所の公園でよく会う犬に勝手にジョンって名前をつけて呼んで飼い主を困惑させた、とかちょっと不思議なイメージがありますが、元春はマジでかっこいいんです。特にライブは素晴らしい!

この盤は80年代から90年代中盤まで彼が率いていた “ザ・ハートランド“というバックバンドが演奏していた時代のセレクションなのですが、とにかく演奏が荒々しい!しかもうまい!
後のホーボーキングやコヨーテバンドとも違う魅力があります。メジャーシーンで初めてラップに挑戦したのが元春(諸説ありますが!)と言われているように、様々なジャンルを積極的に取り入れ、音楽的にもすごく幅が広く、ずーっと聞けるアルバム。元春の声も熱い!最高。

早く、ライブ行きてーっすね。

そうそう、佐野元春はミュージシャンになる前は広告代理店に勤めてたらしいです。

コピーライターかな?

 

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『裏SHOPPING』  選者/志村洸賀

色々先が見えないこのご時世、ひとつひとつのことに真面目に向き合っていたら心を病みます。そんな時に必要なのはメッセージソングでもラブバラードでもチルなトラックでもありません。おもしろい曲です。

ORANGE RANGEのこのアルバムは、様々なヒットシングルの裏に収録されていたカップリングや、アルバムのみに入っているふざけた曲などを集めたB面ベスト盤。サウンドも歌詞も自由で意味不明、バンド打ち込みサンプリング何でもアリの音楽性、そもそもメンバーが歌っていない曲もあったりして、訳がわからなくて聴いていると脳が勝手に活性化します。おそらく聴くだけでおうちヨガ15分×2セット分くらい血流が良くなります。つまり健康にもいいです。

おすすめは、大ヒットした2ndアルバムに収録されていたパパの帰りを待つ子供のことを歌った迷曲「papa」、轟音ギターと狂った打ち込みサウンドに合わせて日本の芸者遊びをラップする「U topia」、壮大なアンビエントテクノにメンバーではない謎の女性のポエトリーリーディングが乗る「沖葉原イナーO-721」、なぜかこのアルバムのためだけにアッキーナがボーカルを担当している「はい!もしもし…夏です!」、など。他にも面白い曲がたくさん入ってます。

世代の人も、そうじゃない人も、流行った当時Mステに出る彼らを見て眉をひそめていた人も、是非聴いてみてください。楽しいです。

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『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』 選者/伊集院隆仁

外出を控えるあまり、春を感じないまま季節が過ぎ去ろうとしております。我が家の窓から遠くに見える桜の木はまだかろうじて花びらを残していますが、春らしさねぇっす。

そんなすっきりしない春に、ビル・エバンス晩年の傑作『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』はやたら滲みます。

録音は1977年ですが、発表されたのはエバンスがこの世を去った後の81年のこと。ベースはエディ・ゴメス、ドラムはエリオット・ジグムンドという、50年代後半からメンバー交代をしつつ続くエバンストリオの(最後のトリオを結成する前の)もっとも成熟したメンバーで、プロデュースはあのトミー・リピューマ。ジャズ至上燦然と輝く最高のピアノトリオの、最高の瞬間を、最高の制作チームがパッケージングした歴史的名盤です。

是非、文末のURLから視聴していただきたいのですが、もう1曲目の「B Minor Waltz (For Ellaine) 」からして鳥肌がおさまりません。長年連れ添った内縁の妻・エレインを自殺で亡くし、その彼女のためにつくった佳曲という、エピソードだけでガチ。つっても、そもそも自殺の原因はエバンスの浮気なので、なんとも微妙ではありますが、まぁ控えめに言って、演奏は極上に美しい。極美。そして悲しい。エバンスのソロに絡むゴメスのバッキングを聞くだけで、涙、涙、涙…エリエール3箱くらい無くなります(ティッシュの買い占めはダメよ♡)。

この曲の次に来るのがアルバムタイトルにもなっているミッシェル・ルグラン作「You Must Believe in Spring」。ルバートで叙情的に歌うエバンスのテーマ、それを受けて紡がれるゴメスの高音域のソロ、そしてエバンスのソロ。雪で覆い尽くされた冬も、いずれかは春がやってくる――ざっくり言うと(歌モノには)そのような歌詞がついているのですが、その詩の世界観を3人はピアノとベースとドラムという3つの楽器のみで、感情豊かに表現してくれます。

ただ、エバンスがこの曲を取り上げた理由は、彼の人生を重ね合わせてみるとなんとも言えない気持ちになるわけです。若い頃からドラッグに溺れ、私生活は、それはそれは荒んだものでした。トリオ初代ベーシストでもあり、エバンスがつくる新しい音楽の可能性をどこまで広げてくれる(はずだった)名手スコット・ラファロを交通事故で失い、10年以上も連れ添った内縁の妻を自殺で失った。さらに、この録音の後にはなるけれども、兄のハリーも拳銃自殺で他界…。彼は人生の中で多くのものを失い、絶望の中でドラッグに溺れ(最後にはそのドラッグで死を迎えるわけです)、ひたすらまっすぐ死に向かって、懸命に演奏をし続けてきました。そんな彼が、この曲にどんな思いを託し、鍵盤に身を委ねたのか。そして、いったいどんな「春」を思い描いていたんだろうか。とかとか、いろいろ思いを巡らせてしまうわけです。

コロナ、なんとかならんかなぁ、と毎日思ってます。でもいつかはなんとかなるんですよ。どんな年にも春がやってくるように(ここぞとばかりの決め顔で)。

ということで、みなさん、その日を待ちましょう。つーか、春、感じてぇっすね。

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ケトルキッチン編集部
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