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連載 : ケトル的【宅活】のススメ

2020/04/15

ケトル的【宅活】のススメ(vol.3 本)

ケトルキッチン編集部

新型コロナウイルスの影響で、#おうち時間 の充実が急がれる昨今。

こんなときこそ、今まで観たかった・読みたかった・聴きたかった

あの作品たちを、思う存分消化する時間にしませんか?

ってことで、これから定期的に博報堂ケトルの「宅活の達人」たちが、

映画や本、漫画、音楽など、それぞれのオススメのコンテンツを紹介していきます。

それではみなさん、お身体にだけは気をつけて、充実した宅活を!

第三回目のテーマは「本」

第三回のテーマは「本」。
本屋B&Bをやっているケトルとしては、本はおうち時間の本命コンテンツ。
本好きケトラーもたくさんいる中、選者たちはプレッシャーいっぱいのはず(笑)。
外出自粛でも、想像力に自粛なし。本を片手に、素敵なおうち時間をお過ごしください。

『奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』 選者/嶋浩一郎

昨年、芝浦のアドミュージアムで「嶋浩一郎の本棚」という企画をやりました。
クリエイティブな刺激を与えてくれる本のセレクトをミュージアム側から依頼されました。
テーマは、「アイデアはあさっての方向からやってくる」でした。
今回はその時セレクトした50冊の本の中から、こんな状況の中で家で読んだら想像力を羽ばたかせてくれるだろう一冊を紹介したいと思います。

分類されてないものが好きです。
分類されたものはすでにみんなが価値を認めているものだから。
まだ、だれも価値に気づいていないものや、辺境にあるものに愛を感じるんです。
そして、すべてのイノベーションは辺境からやってくると思うのです。
一見意味のなさそうなこと、一見ムダだとおもうこと、そこに未来のアイデアのヒントがあると思うのです。

SF作家の大家であるアイザック・アシモフも言っています、
「人間は無用な知識が増えることで快感を感じることができる唯一の動物である」と。

「嶋浩一郎の本棚」の企画のために、日常でみすごしそうなものに注目している本を中心に選書をしました。
「奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島」という本は10年前くらいにニューヨークに行ったときブルックリンの書店でその装丁とデザインの美しさに思わず手に取った本です。
この本にはタイトルの示す通り、一生訪ねないであろう、例えば北極海の孤島に住む人々の生活が美しい地図とともに記されます。
移動が制限されている今だからこと移動のありがたみを感じ、あなたの好奇心を掻き立ててくれる本だと思います。

『奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』(ユーディット・シャランスキー)

『暗幕のゲルニカ』 選者/大木秀晃

ー芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。ーパブロ・ピカソ

冒頭に引用されたピカソの言葉。もうこれだけでワクワクしませんか?
もっと煽りましょう。2001年同時多発テロの後、NYの国連本部でアメリカがイラクへの派兵を発表した記者会見のとき、実際にはあるはずのモノが暗幕で隠されていた。あるはずのモノとはなにか? そう、それが「ゲルニカ」。ではなぜ隠されたのか!?

そして、僕がこの本の中で最もしびれた言葉が、P195に書かれています。
「この絵を描いたのは貴様か?」と聞かれたピカソがなんと答えたのか。それは読んでからのお楽しみに。

このように誰もが知っているピカソの傑作「ゲルニカ」を巡る、アートサスペンスです。
アートサスペンスで有名なのは、『ダ・ヴィンチ・コード』でしょうか。『ダ・ヴィンチ・コード』が好きな人は、確実に好きです。
現代とゲルニカが描かれた第二次世界大戦の時代が交錯し、フィクションとノンフィクションの境界がわかりません。歴史の勉強にも、アートの勉強にもなります。徹底的に事実をリサーチして精巧につくりこんでいく原田さんの真骨頂がいかんなく発揮された作品です。

海外どころか、家の外にもなかなか出られないいま、ぜひこの小説と想像の力で、パリへ、スペインへ、そしてニューヨークへ、ひとつのアート作品を巡る時空を超えた旅にでてみてはどうでしょうか。

『暗幕のゲルニカ』(原田 マハ)

『八本目の槍』 選者/伊藤源太

今村翔吾さんの小説は兎にも角にも面白い。
大人気シリーズ「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」や「くらまし屋稼業」はフィクションの歴史小説だが、 歴史関係なく(いい意味で)単純明快で爽快そしてワクワク読める。

そんな今村翔吾さんの「八本目の槍」は第41回吉川英治文学新人賞を受賞した作品。 賤ヶ岳七本槍と佐吉(石田三成)の8人が主人公。オムニバス形式で七本槍それぞれの物語が展開されていくのだが、それぞれの章が佐吉を軸に巧妙という言葉すら陳腐に思えるほど巧妙に絡んでくる。
要所要所に伏線が散りばめられ読み進むにつれて気持ちが高ぶり、ページをめくる手がとまらない。そして読み終えた時、あたたかさと心地よい余韻が残る。

こんな時だからこそ自我を捨てて嫌われても世の中を変えていこうという佐吉の生き様に没頭しつつ、 あたたかく心地のよい余韻にお家で浸ってみてはいかがでしょう?

P.S. 【この小説を読み終えたとき、その男、石田三成のことを、あなたは好きになるだろう。】と、帯の裏に書かれている言葉を疑ってごめんなさい。


『八本目の槍』 (今村 翔吾)

『ローマ帽子の秘密』 選者/稗田竜子

江國香織さんの、あるエッセイに、ちょっと不便な公園のそばのマンションに引越してから推理小説ばかりを読んでいる、という一節があります(『いくつもの週末』)。
江國さんはその理由を「マンションに一人でいると、奇妙に孤独でつまらないんだもの」と書きます。そのせいでついいろいろと考えてしまいそうなときは、小説の中の事件のことを考えればいいのだ。名探偵もいて、ちゃんとけりがつくから、と。エッセイが刊行されたのもずーっと前なら、私が読んだのもコロナウイルスという言葉も知らなかったころなのですが、久しぶりにふと、思い出しました。そしてこの目的にぴったりな、推理小説も。

それが今回紹介したいエラリイ・クイーンの国名シリーズです。
このシリーズの作品には、「読者への挑戦」なるページが存在します。物語の終盤に突如、作家が出てきて(!!)「次のページから名探偵が披露する、事件の真相を知るのに必要な手がかりは、すでに全部書いた」と高らかに宣言するのです。

つまり、よくよく読んで考えさえすれば読者も名探偵と同じ推理ができる……らしい。本を読んでいる時間だけが、推理小説を楽しむ時間じゃないんです。家の中で、たっぷりある時間に向き合うにはうってつけの作品だと思うんですがいかがですか?

ちなみに『ローマ帽子の秘密』から『スペイン岬の秘密』までの全9作、事件はちゃんと1作でけりがつくので、読み始めるのはシリーズのどこからでも大丈夫ですよ!

『ローマ帽子の秘密』( エラリイ・クイーン)

『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』 選者/弓岡千紋

美術館の営業自粛がはじまって、はや1ヶ月超え…。
自宅で過ごす時間に、アート体験ロスを感じている方にご紹介したい一冊がこちら。

著者である末永幸歩先生は、現役の美術の先生でありアーティスト。
これまで700人以上の中高生に「アート思考」の授業を行ってきたという先生による、いわば体験型のアート本です。
本書は「美術への苦手意識が生まれる“分岐点”は、13歳」という仮説をもとにスタートしていくのですが、プロローグからグイグイ引き込まれる内容ばかり。末永先生が展開する「アート思考」が圧倒的におもしろい! 

そもそも美術とは? なんとなく多くの方が考えていたであろう「上手に絵を描いたり、美しい造形物をつくったり、名画の知識・ウンチクを語れるようになったり…」、ではない! と末永先生。
私たちが美術で学ぶべきだったのは、「アート的なものの考え方=アート思考」を身に付けることだったという今更の事実に驚愕…。
家の中でひとり読みすすめる本の授業では、マティス、ピカソ、カンディンスキー、デュシャン、ポロック、ウォーホルが手がける、20世紀アートを代表する名作たちに出合えます。

「すべての子どもはアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ」と語ったのは有名なピカソ。
その名言の引用で大人の心に火をつけつつ、末永先生は大人だってうれしくなるようなユニークな授業で最後まで飽きさせません。
アートのとらえ方は無数にあるけれど、本書を読んでみると自分がいかに潜在的なアートの枠組みに囚われているかにヒヤリ。
いますぐ美術館には行けなくても、ちょっと新しいアートに親しむ時間がもてるはずです。


『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(末永幸歩)

ケトルキッチン編集部
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