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連載 : きむらけんたろうの旅先で俺も考えた。

2021/12/10

第15話 ボストンにオンライン留学してみた【1】

木村健太郎

2021年の10月に、僕は1年と8ヶ月ぶりの海外出張に行くことが決まりました。
昨年延期になったボストンの短期ビジネススクールの2年目です。
喜怒哀楽をチクチク刺激しながらケース授業を受けるあの密度の濃い日々です。

いやーまたまた大量の英文読むの大変だなあ。
でも久々のリアル開催だから無理にでもスケジュール調整して参加しなくちゃ。
本場のクラムチャウダーを楽しみに、予習頑張ろっと。
このワクワクと緊張が混じった感じは久々だし♪

新型コロナがはじまった時に箱に詰めてクローゼットの奥に仕舞い込んだ出張道具を引っ張り出しました。
ニューヨーク経由ボストン行きのフライトを予約して、ビーっとスケジュールを引きました。
パスポートの期限も久々にチェックしました。
区役所でワクチン接種証明書をもらいました。
その直後にロンドン国際広告祭のフィルムの審査委員長をやる事が決まっていたので、途中にニューヨークの支社にも寄る計画をたてました。
クラスメイトたちとのメールのやりとりも始まりました。

そして、いよいよ気分が盛り上がってきた夏のある日、その絶望的なメールは来ました。

"オンライン開催になりました"

えーーっ!

がーん。

"でも大丈夫。今回オンラインで参加した人には、来年またリアルで開催する卒業セッションに参加することができます"

でも、今年ご褒美のクラムチャウダーなしで頑張れるかなあ。。。

"でも大丈夫。教授たちはオンラインでも最高のインタラクティブな授業をします。"

ほんとかなあ。

そうしているうちに、僕の名前も入った参加者リストも送られてきてしまい、断る理由が見つからないまま参加することになってしまいました(会社の業務だしね)。

フライトをキャンセルし、出張道具ボックスを再びクローゼットの奥に仕舞い込みました。
ロンドン国際広告祭の審査もオンラインになったので、パスポートもワクチン接種証明書も引き出しにしまいました。

でも10本ほどのケーススタディが送られてきたころ、なんだか心配な気持ちが湧いてきました。

まず、本当にオンラインでもインタラクティブな講義になるんだろうか?

2年前に体験したハーバードビジネススクールの真髄は、教授の問いかけに対して参加者がそれぞれの視点から意見をぶつけあってクラス全体の共同脳のようなものが活性化される密度の高い時間が生み出されて、短時間に自分の視点がぐぐっと広がるダイナミズム。
対面でなくて、それってできるんだろうか?
聞いてるだけだと辛いんじゃないかな。

次に、感情体験はあるんだろうか。

もうひとつの真髄は、泣く、笑う、怒る、困る、感動する、といった感情体験によって自分ごと化した深い体験をつくりあげること。
(前回第6話記事:「ボストンで記憶と感情について考えた。」
おれは、オンラインでも笑ったり泣けたりできるんだろうか?

そもそも、ちゃんと起きてられるんだろうか?

たった一週間だけど、時差は13時間で昼夜逆転の生活。
コロナですっかり早寝早起き生活に慣れてしまった僕の身体は、飛行機にも乗らずに時差を調整できるんだろうか?
夜中にPC画面で集中続くんだろうか?
ぼーっとしてて突然当てられて何も答えられずに恥ずかしい思いをするんじゃないか?

最後に、おれは楽しめるんだろうか?

大変だけど楽しければよいけど、大変でつらくてつまんなかったらいやだな。

こうして、世間では緊急事態宣言が解除された10月に、僕は個人的な緊急事態生活を送ることになったのです。

やるからにはまじめにやらねば、と思い毎週一本ずつ英語で課題をやりました。
そうして、当日がやってきました。

さて、日本にいながらオンラインで留学するとはどういうことなのか。
次回はそれを書いていきます。

 

 

木村健太郎
1992年に博報堂入社後、ストラテジーからクリエイティブ、デジタル、PRまで職種領域を越境したスタイルを確立し、2006年嶋と共同CEOとして博報堂ケトルを設立。マス広告を基軸としたインテグレートキャンペーンから、デジタルやアウトドアを基軸としたイノベーティブなキャンペーンまで幅広い得意技を持つ。これまで10のグランプリを含む150を超える国内外の広告賞を受賞し、カンヌライオンズチタニウム部門審査員、アドフェスト審査員長、スパイクスアジア審査員長など25回以上の国際広告賞の審査員経験を持つ。海外での講演も多く、2013年から5回にわたりカンヌライオンズ公式スピーカー。ADWEEKの世界のクリエイティブ100に選ばれる。2017年からケトルに加え、博報堂の海外ビジネスのスタッフ部門を統括する役職を兼任。グローバル統合ソリューション局局長と博報堂インターナショナルのチーフクリエイティブオフィサーとして年間100日間程度海外を飛び回る生活をしてきた。著書に『ブレイクスルーひらめきはロジックから生まれる』(宣伝会議)がある。
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